第27回法定協
「市廃止ありき」で暴走加速
来秋の住民投票実施へ維新強引
大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想の制度設計を議論する大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)の第27回目の会合が10月24日、大阪市役所内で開かれました。法定協で単独過半数を占める維新。「都」構想賛成に転じた公明を巻き込んで、来年秋冬に住民投票を実施することを狙って議論を強引に進めていますが、同時に、「都」構想の矛盾と破綻ぶりも浮き彫りになっています。
この日、法定協の今井豊会長(大阪維新の会)が「特別区」設置のための12項目の論点と今後の日程案を示しました。年内に委員会協議を複数回行って協定書案の方向性を確認し、来年1月から国との事前協議を含めて協定書案の作成を開始。2~4月に住民向けの「出前協議会」を開いた上で、4~6月に協定書案をまとめ、府・大阪市両議会の議決を経て、秋から冬に再度の住民投票を行うというものです。
委員間協議では「特別区」の区割りや名称、設置コスト、議員定数などについて議論。大阪市を廃止して「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」の4つの「特別区」に分割し、本庁舎の位置は「淀川区」が現淀川区役所、「北区」は現大阪市役所本庁舎、「中央区」は現中央区役所、「天王寺区」は現天王寺区区役所とするなど、維新の案が示されました。
採決はしなかったものの、今井会長は公明党の同調を前提に、提案どおりに制度案をまとめる方向性を確認。「大阪市廃止ありき」という、維新の思惑通りに議論が進められようとしています。
支離滅裂な「合同庁舎」案
都構想 矛盾・破綻鮮明に
共産・山中市議が批判
新庁舎建設せず現市役所に配置
前回の法定協(9月)で公明党は、「特別区」設置の初期コストを抑えるためとして、既存庁舎を活用することを提案。これを受けて今回の法定協では、吉村洋文知事(大阪維新の会代表代行)と松井一郎大阪市長(同代表)の指示でまとめられた「合同庁舎」案が示されました。「特別区」ごとに新庁舎を建設せず、「特別区」の区域を超えて、現在の大阪市役所の本庁舎にも職員を配置するというものです。
日本共産党の山中智子大阪市議は、従来の案でも「特別区」の機能が区域内に分散し「たこ足」状態だったが、さらに合同庁舎になれば「住民にとっては何が何だか分からない。支離滅裂だ」と厳しく批判しました。
独立した自治体とは言えない案
山中氏は、維新は大阪市を廃止して設置する「特別区」は「中核市並み」と言ってきたが、「合同庁舎となれば、独立した自治体とは言えない。本当に近隣中核市並みの庁舎を整えようとすれば何百億という初期コストがかかるという批判から出された案だ」と指摘しました。
さらに「『中核市並み』にすることと、コスト抑制は両立しないことが明らかになった」と強調。「結局、『広域の一元化』が(大阪市廃止の)肝であって、『特別区』はどうなってもいいという案だ」と述べました。
松井市長は「合同庁舎で同じ場所で仕事をすることで情報共有できる」などと強弁。山中氏は「『特別区』を本当に基礎自治体にするつもりがあるのか。住民の福祉向上に役立つ自治体にしようとしていない」と反論しました。
維新は「特別区」議会全体の議員定数について、現在の市議会定数83をそのままあてはめることを提案。山中氏は「他の中核市や東京特別区に比べて、人口当たりの議員数は3分の1以下になる。(大阪の)『特別区』はどうでもいいということか」と指摘しました。
(大阪民主新報、2019年11月3日号より)