おおさかナウ

2019年11月03日

「二重の逆流」――大阪の維新とのたたかい(中)
日本共産党大阪府委員会政策委員会

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5 はりめぐらされる虚構
「大阪の成長を止めるな」?!

 「都構想」「カジノ」をめぐって府民との大きな矛盾があらわになる維新ですが、その支持をつなぎとめるうえで、府民的にはりめぐらされるいくつかの虚構があります。
 その一つが、「大阪の成長を止めるな」。今年のダブル選で維新がポスターにかかげたフレーズです。これと抱き合わせで、「10年前に戻していいのか」と、さも維新政治で大阪が前に向いているかのような大宣伝を展開しています。

停滞する大阪経済、落ち込む個人消費

総務省の家計調査より

総務省の家計調査より

 しかし、現実は違います。たとえば内閣府が都道府県ごとにだしている経済統計(県民経済計算)をみると、リーマンショック後の景気の底は2009年度でした。そこから最新統計の2015年度までの大阪の経済成長率は6・6%で、全都道府県平均の8・2%を下回っています。世界でも異例な形で「成長しない国」となった日本のなかでも、大阪経済はさらに停滞しているのです。
 大阪経済の落ち込みは、府民の所得が伸び悩み、消費が冷え込んでいるためです。維新は「インバウンド(外国人観光客)の増加」を「成長」の証にしていますが、それは格安航空会社LCCの普及やアジア諸国のビザ緩和などによるもの。逆にインバウンドによって百貨店の売り上げが伸びているのに、府民が食料品や日用品を買い求めるスーパーの販売額は伸びません。サラリーマンの賃金も2014年の消費増税時に名目で増えたものの、実質落ち込みが続いています。大阪市と全国の大都市(政令市・東京都区部)家計消費を比べると大阪市は2~3万円低く、落ち込みも大きくなっています。

消費税減税は主張できず

 これをどう打開するのか。最大の焦点は、消費の落ち込み、貧困と格差に拍車をかける消費税増税ではなく、消費税減税へと大きくカジを切り替えることです。日本共産党は「5%」への減税をかかげています。
 ところが維新は、参院選で「消費税凍結」を叫んでいましたが、10月1日に増税が強行されても、「減税」を主張できず、「給付付き税額控除」というまやかしを並べるだけです。最初から増税しなければ控除は不要なわけで、そもそも本気で増税を止める気があったのかが、問われるものです。
 維新の「成長戦略」に並ぶのは、「カジノ誘致」や「夢洲開発」、インフラ整備など巨大開発がズラリ。何のことはない、「大阪湾ベイエリア開発」で「りんくうゲートタワービル」「WTC」などゼネコン浪費事業を広げ、破たんした道を「都構想」の名で焼き直すだけのものです。

6 安心、豊かなくらしは二重、三重にやってこそ

 張り巡らせる「虚構」の2つめは「二重行政の解消」で財源を生み出したというものです。

「効果額4000億円」宣伝が崩壊

 維新は2010年、「都構想」を持ち出し「二重行政はムダ」「解消すれば4000億円の財源が生まれる」と宣伝しました。ムダがなくなり、多額の財源が作られるなら誰しも賛成でしょう。
 実際はどうだったか。
 「効果額4000億円」は、2013年に市が法定協議会に提出した資料で年1億円しかないことが明らかになりました。
 2018年の法定協議会資料は「改革効果額」は3900万円としています。
 大宣伝された「4000億円」は虚像だったことは明らかです。そればかりか、多くの識者からは、大阪市の廃止・分割コストを入れればマイナスとの指摘が相次いでいます。

「二重行政必要」が69%

 維新は二重行政のムダとして大学や病院、図書館、体育館などをあげ、住吉市民病院を5億円の金が浮くと廃止しました。
 しかし、地方自治体の役割は住民の医療、福祉、営業を守ることです。図書館や体育館などは充実させることです。ムダなものは何重であっても駄目ですが、良いことは二重、三重にやるべきです。
 子どもの医療費助成は府と市町村が行っていますが、府の制度改善が、市町村の改善を促していることを見ても、二重、三重に充実させる大事さは明らかです。
 藤井聡京都大学大学院教授が2016年に行った「二重行政のうち中央図書館、中央体育館、大学、都市開発など同種の施設や事業について」の世論調査でも、「ムダなものは減らせばよいが、ニーズが大きく便利なものも多い」+「ほぼすべて住民にとって便利なので今のままで良い」が69%にものぼっています。
 府立中央図書館は56万人、市立中央図書館は140万人、府立体育会館は83万人、市立中央体育館は62万人もの利用者があり、充実が求められています。

立場の違い超えたたたかいが虚構をくずす

 維新は、二重行政のムダの象徴として、80~90年代に府と大阪市が建設したりんくうゲートタワービルやWTCビルを大宣伝しました。しかし、両方ともゼネコン奉仕で作られたもので二重行政とは関係のない話でした。
 日本共産党は、当時から、バブルの発想による建設と批判してきましたが、2015年の住民投票で自民、公明も含めた共同の「公報」には「バブル期の政策の失敗です」と書かれました。橋下市長(当時)も「過去の政策の失敗。おっしゃる通り」と認めざるを得なくなりました。
 保守層も含めた立場を超えた共同の広がりが維新の虚構を崩したのです。

7 「身を切る改革」は住民サービス切り捨ての「入口」

 維新の「虚構」の3つ目は、「身を切る改革」なるもののペテンです。
 参院選公示前夜の党首討論。日本共産党の志位和夫委員長と維新の松井一郎代表の論戦は注目を集めました。
 松井氏が「増税するなら、国会議員の身を切る改革を」と志位さんに迫りました。志位さんは「身を切れば増税を押し付けていいのか」とのべるとともに、「身を切るというのなら、政党助成金をすべて返上したらどうか」。さらに松井氏が「文書交通通信滞在費の公開」をもちかけると、志位さんはすでに公開したのをご存じないのかとのべつつ、維新議員が「セルフ領収書」で「文通費」を自分の政党支部にいれていることを暴露すると、松井氏のドヤ顔が一転して苦虫をかみつぶしたようになり、そのシーンがSNSでも大きく拡散されました。
 大阪でも同じです。維新が「身を切る改革」をうたいながら、すすめてきたのはどんなものだったでしょう。
 大阪府政においては、福祉団体への補助金カット、国民健康保険の府内統一保険料化で市町村独自の保険料軽減措置をなくし(経過措置あり)、大幅値上げ、中小企業への支援に欠かせない商業振興予算は7億1000万円から3000万円に、ものづくり支援予算は4分の1に減らしました(2007~2018年度)。大阪市政においても、公約違反の「敬老パス有料化」や上下水道の福祉減免・新婚家賃補助・コミュニティバス(赤バス)の廃止など709億9500万円もの住民サービスを削減しました(2012年~2015年度)。
 自分たちが「身を切る」といいさえすれば、府民、市民の「身」を平然と「切る」。そのくり返しです。
 そして、「身を切る」そのものが嘘八百です。
 志位委員長が指摘したとおり、「日本維新の会」として2013~2018年の5年間、手にした「政党助成金」は総額103億円にものぼります。今年度さらに13億円が積み増しされます。
 松井知事(当時)の「退職金廃止」もひどいからくりです。2015年、たしかに退職金は廃止しましたが、毎月の給料に退職金廃止分を分割して上乗せしたために、一時金を含め、4年間で348万円も逆に手取りを増やしました。
 最近も、維新のある府議が、生命保険会社勤務当時、実在しない社内預金を顧客に紹介したことで不正に約300万円を預かったとして、同社から懲戒解雇相当の処分を受けていたことが明るみに出ています。
 「身を切る」どころか、「身を肥やし」、「身内に甘い」体質が問われています。(下はこちら)

(大阪民主新報、2019年11月3日号より)

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