おおさかナウ

2019年11月10日

「二重の逆流」――大阪の維新とのたたかい(下)
日本共産党大阪府委員会政策委員会

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8、「なんでも民営化」はどこへ向かうか

 大阪の維新政治におおもとから問われているのは自治体のあり方、公教育のあり方です。
 維新の狙いは、「何でも民営化」です。

「大阪メトロ」の「夢洲駅」巨大ビル構想

 橋下徹市長以来、何度もとん挫した大阪市営地下鉄の「民営化」が昨年4月、大阪市が100%出資する株式会社(大阪メトロ)として実施されました。大阪市営地下鉄は黒字経営を続ける「超優良企業」であり、「民営化」の理由はありませんでした。
 維新は、「トイレ改修」や「御堂筋線全駅に可動柵設置」などを「民営化」と一体に「実績」宣伝していますが、いずれも2011年、平松市政が計画したもの。安全柵は、261億円をかけ2019年度末までに全駅で設置する計画だったのを、橋下市長が中止していました。
 「民営化」の狙いをあらわにしたのが、発表された「中期経営計画」です。そのなかで「カジノ」に直結させた「夢洲駅」建設で、1000億円を投じ、55階の超高層ビル建設計画をうちだしました。また、市大・府大の新キャンパス計画が浮上している森ノ宮地域の開発もうたっています。
 維新が「大阪が変った」と喧伝する一つに、天王寺公園の「てんしば」や大阪城公園の管理を民間企業に委託し、「民間の力で集客アップした」「年間4000万円の『赤字』から、2億以上の『収入』を得るようになった」というものがあります。しかし都市公園とは、「良好な都市景観の確保」「都市の防災性の向上」「生物多様性の確保」など多様な機能をもつ「都市の根幹的な施設」(国土交通省)であり、単なる「収入源」ではありません。
 さらに維新市政によって水道を民間に売り飛ばす危機が2014年、17年の2度訪れました。しかし、災害時の対応や安全性の問題など大きな反対の声があがり、議会で否決されました。ところが、昨年5月、安倍政権が企業に公共水道の運営権を持たせるPFI法を可決。上下水道や公共施設の運営権を民間に売る際は地方議会の承認不要という特例までつけて通過させました。大阪市はその1ケ月後、市内全域の水道メーター検針・計量審査と水道料金徴収業務を、仏ヴェオリア社の日本法人に委託しました。
 維新は義務制の小中学校も、「民営」が理想とのべ、「特区」で中高一貫の公設民営学校(国際バカロレア等)を開校しています。

求められるのは「民」でできない「公」の役割

 しかし、地方自治体の本来の使命は「住民福祉の向上」(地方自治法)です。大都市大阪で生まれている貧困と格差の広がりの是正、介護・医療の充実、市民の命と財産を守る防災などは、どれ一つとっても「公」の役割なしにはできません。府政・市政がもっぱら「民間」の投資分野を増やすことに力を注ぐのは自治体の役割ではありません。
 「官から民へ」ではなく、「民ができないことを公で」こそ、いま求められています。

9 破壊される公教育を蘇らせる

「教育無償化」を掲げるもとで

 維新は、府政での「私立高校の授業料実質無償化」や大阪市政での「幼児教育の無償化」を最大の実績として宣伝し、大阪府立・市立大学の授業料の無償化、一部支援の拡充の方向もうたっています。
 高等教育をはじめ教育の無償化は国民的要求であり、国際的な流れです。制限をつけず、完全無償化への方向をたどることは当然です。それは維新が求める「憲法改正」など全く必要のないことです。
 しかし、こうした「光」に隠れたところで、大阪の教育にどんな実態がすすんでいるでしょうか。
 維新の教育施策の狙いを、奈良女子大学の中山徹教授は「『競争と格差』教育を徹底させ、学校と教職員を支配し、公教育をつぶし、民営化を進めようとしている」と指摘します。
 とくに大きな批判が湧きおこっているのが大阪府独自の「チャレンジテスト」です。たった1回のテストが高校入試の内申点に反映し、しかも、学校ごとに平均点の高い学校ほど多くの生徒に高い内申点をつけるという、学校間格差を極限にまで広げます。しかも昨年、吉村市長(当時)がテスト結果を教員・校長の人事評価、ボーナス、学校予算にまで反映させると打ち出し、何重もの歪みを広げています。
 全国的には横ばい傾向にある小中学生の不登校は、大阪では増え続けています。どの子にも行き届いた教育を実現するためには、教職員を増やし、「少人数学級」を広げることをはじめ教育環境整備が必要です。ところが維新は一貫して独自の「少人数学級」拡充から背を向けています。大阪府予算でいえば年間82億円で小学3年生~中3までの35人学級が可能です。維新は「塾代助成」などはすすめるものの、教育予算全体は一向に増えていません。

高校教育現場の実態は

 高校教育の現場はどうでしょう。大阪府では条例により府立高校は、3年連続の定員割れで廃校対象となります。すでに6校が統廃合され、今後も23年までに府市合わせて8校が統廃合の対象とされています。
 学校間の競争も激化しています。私学運営に関わる経常費助成は切り下げられ、生徒一人当たり30万6670円(19年度)は全国ワースト2位、国標準額と比べ一人当たり2万9500円もの差です。さらに、生徒数に応じた配分方式に変えたことで、小規模校の運営は厳しくなり、各学校は生徒数確保に必死です。募集定員の倍以上の生徒を入学させたことにより、教室が足りなくなる事態も発生しています。

子ども本位の教育を語り合おう

 維新政治のもとで、「大阪から逃げる教員」(『AERA』2017年6月8日号)ともいわれる深刻な事態が広がります。
 教育予算全体の拡充と少人数学級の拡充、教職員の自主性と専門性を高めることによってこそ、すべての子どもの発達・成長が保障できるきめ細やかな教育が可能になります。「どんな子どもに育ってほしいか」、「そのために求められる教育はなにか」など、子ども本位の「教育」を語りあうことが、維新による教育破壊を乗り越え、本来の教育をつくる力になります。

10 市民と野党の共同でこそ明日の大阪が

 大阪では、これまで3たび――2015年住民投票と14年・17年の堺市長選挙で維新を打ち破った経験をもっています。その最大の教訓は、「論戦の力」とともに「共同の力」「草の根の力」でした。
 ことしの知事・大阪市長ダブル選直後、6月の堺市長選挙でも、前市長の政治資金問題が大きく響き、敗れはしましたが、告示日の直前に自民党を離党して立候補を表明した野村友昭氏が、大方の予想を覆し44・9%の得票で維新候補を追い詰め、次の勝利への展望をひらきました。その直前、自民党府連執行部と公明党が「都構想」にすりより、維新に屈服するなかでも、広範な保守・無党派層が市民、野党とともにたちあがった結果です。
 参院選では「市民と野党の共闘」の力で、自民・公明・維新などの改憲勢力を3分の2割れに追い込みました。
 参院選後、日本共産党は野党連合政権にむけた話し合いを開始しようと野党に呼びかけました。大阪府委員会が9月、立憲民主党府連にこの呼びかけを手渡し、懇談するなかで、森山浩之代表代行は「市民と野党の共闘でこそ安倍政権批判の受け皿ができる」とのべました。このなかでは維新の「都構想」や「カジノ」ストップという点でも一致してたたかいをすすめることを議論しています。野党連合政権へのよびかけは、社民党、国民民主党各府連にも手渡しています。
 10月6日に「市民と野党共同街宣in大阪」がおこなわれ、立憲民主党の長尾秀樹府連幹事長は「国会で野党共闘をより発展、強化してがんばる」とのべ、日本共産党の山下よしき副委員長は「消費税減税や関電疑惑追及でも野党がスクラムを」と訴え、社民党の服部良一府連代表(当時)もスピーチ、山本太郎れいわ新選組代表からメッセージが寄せられました。
 「市民と野党の共闘」の勝利と日本共産党の躍進で大阪から自民、公明、維新を少数に追い詰める。そして、大阪では、大阪市つぶし、くらしつぶしの「都構想」強行にも、庶民の不幸を食い物にする「カジノ大阪誘致」にも、「市民と野党の共闘」と保守・無党派の広範な共同でノーを突きつけ、維新政治を転換する――日本共産党大阪府常任委員会は9月27日に「維新との新たなたたかいを大阪のすべての党員、支持者のみなさんによびかけます」を発表しました。
 「カジノ反対大阪連絡会議」は10月22日、各団体と共同して「カジノ・ストップ市民集会」を開催し、野党各党も参加し、大きく成功しました。大阪革新懇は11月16日に「総選挙勝利・野党連合政権実現めざす立憲野党シンポジウム」を、「明るい民主大阪府政をつくる会」「大阪市をよくする会」は11月27日に「都構想ストップ、府民のつどい」を開催します。
 いま日本共産党は、「安倍政権と一蓮托生の道を歩むのではなく、大阪のことは大阪で進路をきりひらこう」「貧困と格差をただし、だれもが安心して暮らし、働き続けられる大阪へ、府も、市も、『公』の責任を果たせ」「大企業、米カジノ企業だけが働きやすい大阪づくりではなく、庶民のふところをあたため、中小企業支援で成長し、本当に成長する大阪へ」など、「希望ある大阪」への道をかかげ、維新政治そのものの転換へ、全力をあげています。

(大阪民主新報、2019年11月10日号より)

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