大阪市廃止・解体の「都」構想案ボロボロぶり露わ
公明党屈服のもとで様変わり
「法定協」議論が示すもの
維新はダブル選結果をテコに、「大阪市廃止・解体」をはかる「都」構想の「またぞろ住民投票」へと躍起です。その議論の舞台、「大阪府市大都市制度(特別区設置)協議会」(法定協)は、公明党が維新に屈服するもとで様変わりしています。どのテーマでも、維新委員が「素案通りに」と言えば、公明委員は「異議はない」。自民党委員が「是々非々」の立場から疑問を出し、日本共産党の山中智子委員が厳しく批判しても、維新の会長は「いろいろ意見はいただいたが、おおむね支持を得た。この方向で取りまとめを」。
維新は、年内にも「協定書案の方向性」をとりまとめ、来年早々に「協定書案」を出し、「秋から冬」の「住民投票」を狙います。しかし、「法定協」の議論をリアルにみると、「都」構想案のボロボロぶりがあらわです。
「住民サービス維持」?
――維新・公明の茶番劇
大きな焦点の一つが、大阪市を廃止し、4つの「特別区」にバラバラにすれば、敬老パスや子どもの医療費助成など、政令市ならではの多くの住民サービスが維持できないことです。
実は公明党もこう言っていました。
「特別区素案の財政調整制度では、現行の住民サービスを維持していくということは到底できない」(土岐委員 第16回法定協)。
ところが、維新に屈服後は、「協定書には『維持することに努め』ではなく、『維持する』と書いてほしい」と懇願するだけ。維新が「特別区設置時点は維持する」「設置後は維持するよう努める」と2段階に分けて書くことを提案すると、「意見を反映していただいた」と受け入れました。
しかし、「特別区設置時点」で市民サービスが「維持」されるのは当然のこと。問題は「設置後」どうするかです。「特別区」に財源の裏付けがなければ、「維持するよう努める」が、現実にはできない危険が濃厚です。
維新・公明の茶番劇です。
中之島に「合同庁舎」?
――馬脚現す2つのウソ
10月の「法定協」に、「中之島合同庁舎案」が出されました。
4つの「特別区」にして庁舎を整備すると637億円ものコストがかかる。そこで執務室が不足する分は、中之島庁舎で一緒にというものです。
委員から批判が飛び交いました。「その自治体エリアのなかに庁舎がない自治体があるのか?」(離島にはあるそうです)、「1区の場合、災害時、淀川をこえて中之島庁舎に職員を?」。
この議論は、維新のペテンを2つの点で浮き彫りにしました。
一つは、「特別区」をつくると莫大なコストがかかることを否定できなくなったこと。一時は、無理矢理「嘉悦学園報告書」を出し、「特別区設置で10年間に1兆円の経済効果」があり、設置コストを上回ると叫びましたが、それもまゆつばものでした。
いま一つは、「特別区」は住民に身近になり、「ニア・イズ・ベター」だというペテンです。部署によっては、隣の自治体に出向かないと窓口もない。そのどこが「身近」でしょう。
何でも「一部事務組合」
――住民の要望届かない
11月の「法定協」では、「一部事務組合」の奇怪さが議論になりました。
「特別区」に分けられない事務は、中之島庁舎に「一部事務組合」をおき、各特別区にまたがる事務をおこなうというのです。地方自治法で認められている制度ですが、東京都の場合、その対象は清掃などごく一部です。
ところが、維新の案は基礎自治体が担うべき大事な事務――介護保険、民間の養護施設や生活保護施設の設置認可、住民基本台帳・税務・国保などのシステム、福祉施設や中央体育館などをすべて「一部事務組合」に放り込みます。
介護保険は、いまでも大阪市は保険料が全国最悪、さまざまな要望が渦巻きます。ところが、「特別区」が設置されると、「介護保険は一部事務組合の所管」とされ、「特別区」に掛け合っても、手も口もだせない仕組みになります。
「二重行政解消」を看板にしているのに、「大阪府」と「特別区」、「一部事務組合」の「三重行政」をつくるのもいびつです。
財源なき「財政調整」?
――待ち受ける切り捨て
財源問題は、最大のネックです。これまでの「市税」のうち多くは「府」に吸い上げられます。
さらに財政力のある東京都とは違い、国からの地方交付税なしにやれないのが大阪府市です。その地方交付税が、4つの特別区それぞれの必要額ではなく、「市」が続いているとみなして計算され、必要額が交付されない仕組みです。国の地方制度審議会で、ある委員は、「大阪市を廃止して特別区になった結果、より厳しい財政事情に追い込まれる。…『茨の道』」と述べています。
「法定協」では不足額200億円との指摘もあります。「どれだけ不足するか、基準財政需要額を出して計算を」と委員が求めても、維新はボロ隠しのため、「必要ない」の一点張りです。
「特別区」で財源が不足すれば、「府」と「財政調整」するといいますが、どちらも財源不足になれば、「調整」できる余地はありません。結局は住民サービスを削るか財産処分でしか、切り抜けられません。
ウソから始まった都構想
もともと「都」構想は、「騙されないで下さい。大阪市はバラバラにしません」(2011年ダブル選挙の維新ビラ)というウソから始まりました。2015年の住民投票で決着がついたのに、維新は、公明党を「密約」と「脅し」で屈服させ、「またぞろ住民投票」へとゴリ押ししています。
しかし、それは維新の強さを示すものではなく、いかに「都」構想が大義も道理もないかを物語ります。
「法定協」論議であらわになる矛盾と破綻ぶりを徹底的について、「都」構想ストップへの大きなたたかいと共同を築きましょう(N)。
特別区の区割り案
法定協で議論されている「特別区」の区割り案(4区案)は次の通りです。
▽第1区(此花・港・西淀川・淀川・東淀川)▽第2区(北・都島・福島・東成・旭・城東・鶴見)▽第3区(中央・西・大正・浪速・住之江・住吉・西成)▽第4区(天王寺・生野・阿倍野・東住吉・平野)
10月24日の第27回法定協では、維新が「特別区」の名称を第1区=「淀川区」、第2区=「北区」、第3区=「中央区」、第4区=「天王寺区」とし、本庁舎の位置を「淀川区」は現淀川区役所、「北区」は現大阪市役所本庁舎、「中央区」は現中央区役所、「天王寺区」は現天王寺区役所とすることを提案しました。公明党もこれに同調し、維新案に基づいて制度案をまとめる方向が強引に確認されました。
住民投票ありきで強引に 法定協
大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想の制度案を議論しているのが大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)で、知事と大阪市長、府議と大阪市議の各8人の計20人で構成しています。
現在の委員は維新11人(吉村洋文知事、松井一郎大阪市長、法定協会長の今井豊府議を含む)、自民4人、公明4人、日本共産党1人。法定協で単独過半数を占める維新は、4月のダブル選・統一地方選後に「都」構想賛成に転じた公明党を巻き込み、来年秋冬の「住民投票ありき」で強引に議論を進めていますが、「都」構想の矛盾と破綻ぶりも鮮明になっています。
(大阪民主新報、2019年12月1日号より)