カジノ誘致へまっしぐら
維新府・市政の異常さ
際立つ「実施方針(案)」
大阪府と大阪市が11月21日に発表した「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備 実施方針(案)」について、日本共産党府カジノ問題プロジェクトチームの中山直和事務局長から寄せられた論考を紹介します。
日本共産党府カジノ問題プロジェクトチーム
中山直和事務局長
賠償金支払いで後戻りできない仕組みに
国のカジノ管理委員会発足前に
「実施方針案」では、国のカジノ管理委員会がいまだ発足していないのに、先走った誘致手続きを進める維新府・市政の異常さが際立ちます。そればかりか、カジノの事業期間を35年の長期に設定し、自治体の都合で契約解除をするには「賠償金」を支払う義務が明記されるなど、今後、選挙でカジノ反対派の首長が選ばれても後戻りできない仕組みが埋め込まれているのです。
「カジノから入る700億円を福祉に」松井市長
松井大阪市長は、カジノに反対する世論の強まりを気にしながら、「カジノから入る700億円を福祉・教育に回す」と実利を宣伝しています。また12月10日の法定協議会では、「IR収入金の配分」という資料を出し、大阪市分(350億円)を「特別区」に配分する方法を示すなど、「特別区」の財政が潤うとの印象を与えようとしています。
しかしその700億円は、違法な民間賭博・カジノによって客が負けた金、人の不幸を踏み台にした金なのです。IR推進局が今年2月に出した「大阪IR基本構想(案)」に700億円の根拠となる数字(一部)が記載されていますが、それによるとカジノ事業者の粗収益(3800億円)の15%(570億円)と、日本人が払う入場料6千円の総額の半分(130億円)なのです。
日本人は1回通えば4万円負け
また、カジノ事業者の粗収益の内、日本人が負ける額は1600億円、日本人のカジノへの入場予想を年間430万人としており、日本人がカジノに入場するたびに4万円負ける「見通し」になっています。このような人の不幸を踏み台にする行為は、地方自治体の自殺行為です。
依存症の恐怖と「経済効果」を上回る損失
「IR基本構想(案)」では、客がカジノに出す「賭け金総額」を記載せず、「非公開」としています。海外のカジノ事業者の例に基づいて計算すると、「賭け金総額」は年間5兆4千億円と試算できます。
5兆4千億円のお金がカジノで動き、カジノ事業者の手元に3800億円が残る一方で、約5兆円もの大金を客が勝つということになります。この射幸性の高さがギャンブル依存症を大量に生み出す原因です。
マイナスの効果の検証・公開を
カジノに入れ込み100億円以上もつぎ込んだ
大王製紙の元会長は、初体験のカジノで100万円が2千万円にもなった体験が、その後のギャンブル依存症と横領事件につながったと、自身の著書で語っています。
ギャンブル依存症が勤労意欲の低下や犯罪の増加につながることは、カジノに反対する世論の最大の要素です。しかし国も大阪府・大阪市も、カジノによるマイナスの経済効果の検証を拒否していることは、重大な背信行為です。
府民が、カジノ誘致の可否について正しく判断できるよう、マイナスの経済効果をきちんと試算・公表することが、地方自治体に求められています。
夢洲へのカジノ・万博誘致が最大の弱点
いま、夢洲ではコンテナターミナルが稼働し、関西の物流拠点の役割を担っています。また、現役のごみ最終処分場として、今後も長く使い続けることが市民の利益につながります。さらに、夢洲は渡り鳥が飛来する生物多様性Aランクのホットスポットでもあります。
これらの役割や価値に目を向けず、「負の遺産」だとして巨大開発を合理化することは、実態を無視した暴論です。
2025年万博と同時期に、カジノ開業のための大規模な工事が計画されています。上下水道や鉄道などのインフラ整備、さらにその前に急速埋立で土壌改良工事が必要とされる中、「万博 夢洲整備綱渡り」「突貫工事IRと競合」(毎日)「夢洲アクセス渋滞難題」(日経)などと難工事が予測され、カジノ事業者の撤退理由にもなっています。
〝カジノあかん〟を圧倒的世論に
今後も使用可能な市民の共有財産を破壊し、カジノのために道路・鉄道建設を強行することが府民・市民の利益に反することは明らかです。また、台風の巨大化や地震・津波の被災が予測される中、住民の生命・財産を守るインフラ整備を進めることこそ急がれます。
府下各地で、「カジノより暮らし・防災を!」の世論を広げることが急務となっています。カジノあかんの声を圧倒的な世論にするために、全力を尽くしましょう。(なかやま・なおかず)
「実施方針案」に盛り込まれたIR・カジノ開業までの日程案
2019年
12月 募集要項等の公表
2020年
6月頃 設置運営事業予定者の選定
7~10月頃 区域整備計画の作成及び公聴会等の実施
11~12月頃 府議会・市会の同意
2021年
1月 区域整備計画の認定の申請・認定(国)(注1)
秋頃 実施協定の締結・設置運営事業の開始、土地引渡し・工事着工(注2)
(注1) 国のスケジュールは想定
(注2) 時期は応募者の提案による
(大阪民主新報、2019年12月22日号より)