時代をつないで 大阪の日本共産党物語

第71話 関空・ベイエリア開発

40兆円規模のプロジェクト乱立    

ゲートにならなかったりんくうゲートタワービル=01年4

 1991年、関経連は「ベイエリア開発は今年最大の課題」(宇野収会長年頭所感)とのべ、4月に宇野会長がトップに立つ「大阪湾ベイエリア開発推進協議会」がその「グランドデザイン」を打ちだします。
 それはWTC(ワールドトレードセンター)、ATC(アジア太平洋トレードセンター)、りんくうゲートタワービルなどの既存計画をとりこむとともに、関空を起爆剤にして関西一円に920件、事業費総額39・7兆円という巨大プロジェクトを林立させる構想でした。
 「すべてのプロジェクトは関空に通ず」「世界の人、物、情報、金を大阪に」などと豪語されました。
 それは「日米構造協議」でアメリカいいなりに自民党政府が約束した「国内630兆円投資計画」にも組み入れられます。国と自治体による年間投資合計額が「ゼネコン浪費に50兆円、社会保障に20兆円」という「逆立ち政治」が横行しました(大阪ではゼネコン浪費2・8兆円、社会保障1・3兆円規模でした)。

「ベイエリア特別法」

店子が入らないATC(手前)とWTC(中央)=09年10月

 この巨大プロジェクトを推進する舞台装置が「ベイエリア特別法」(大阪湾臨海地域開発整備法)でした。92年12月、衆院では委員会審議なし、参院でもわずか2時間の審議で自社公民各党が成立させました。
 日本共産党大阪府委員会は、これは「主権財界」法だときびしく批判しました。
 ――「整備計画」は、「ベイエリア推進機構」の意見を聞いて作成するとあります(第4条)が、「機構」は会長が関経連会長、副会長が知事、大阪市長です。作・演出とも関西財界という色合いがクッキリです。
 ――「整備計画」に位置づけられた事業には、低利子・無利子の融資をはじめ、税・財政上の特典がふんだんに与えられます(第7条)。
 ――「特別法」制定の狙いは、開発計画に邪魔になる規制を面的に撤廃することでした。関経連のある幹部は、「企業むき出しのプロジェクトは認めないだろう」。しかし、「自治体もそれに合意している、となれば、行政側の規制緩和の指針になる」と語っていました。
 問われたのは社会党でした。84年に「民活方式」を決めた「関空法」には、さすがに反対しましたが、「ベイエリア特別法」の際は、田辺誠委員長らが関経連と懇談した場で制定を約束します。

破たんと重し

 しかし、初めから見通しのない巨大プロジェクトは次々と破たんに直面します。
 関空そのものが、「採算ありき」の甘い見通しの土砂投入量によって地盤沈下が止まらず、93年に予定していた開港を1年延期。「1日の金利1億円」の負担がのしかかります。
 ATC・WTCは店子がはいらず、2棟つくって「ゲート」にする予定だった「りんくうゲートタワービル」は採算見通しがなく1棟に計画変更。「りんくうタウン」は進出予定企業があいついで撤退し、92年1月に土地分譲計画を白紙撤回。「現代の宝島」どころか「ゴーストタウン」とささやかれました。
 この破たんは「府市バラバラ」だったからではありません。「府」も「大阪市」も、関西財界主導のゼネコン浪費型開発にのめりこんだからにほかなりません。
 そのツケは、大阪経済と府・大阪市財政などへの巨大な重しとなりました。(次回は「阪神・淡路大震災のもとで」です)

(大阪民主新報、2021年12月12日号より)

 

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