時代をつないで 大阪の日本共産党物語

第92話 大阪市職員「思想調査」、2条例とのたたかい

「市長の業務命令」 

府議会の開会日に、「思想調査」中止、データ廃棄を訴えてデモ行進する人々=2012年2月23日、大阪市中央区内

 「あなたは特定の政治家を応援する活動に参加したことがあるか」「誰に誘われたか」「組合加入を誘われたことがあるか」
 2012年2月9日。大阪市の全職員に送られた「アンケート」が職場を震撼させました。
 送ったのは「橋下徹」。大阪市長名で、「これは業務命令」であり、「正確に回答しない場合は処分がありうる」と。
 メーリングリストでアンケートを知らされた弁護士の愛須勝也は「腰を抜かすほど驚いた」と語り、自由法曹団をあげたとりくみをすすめます。
 大阪市役所労組では、「回答を提出しなければ自分が処分されるかもしれないし、正確に答えれば先輩たちに迷惑がかかるかもしれないと悩み、アンケートを提出した職員も心から苦しんでいた」(「思想調査」アンケート国賠訴訟原告団事務局長の川本正一)。家族会議もすすめられました。そして、組合員であるなしを問わず、「回答せざるを得なかった人も励ます方法を考えた」(当時委員長の竹村博子)と「ただちに回答を廃棄」するよう求め、たちあがります。

断罪

 大阪府労働委員会(府労委)は2月22日、大阪市(橋下市長ら)に対して、市の責任において調査の続行を差し控えるよう、異例の早さで「勧告」します。
 日本共産党は志位和夫委員長の記者会見(2月16日)、大阪府委員会のアピールの発表(24日)などで、このアンケートが、憲法に保障された思想・良心の自由と政治活動の自由を踏みにじり、労働組合の正当な活動を侵害する不当労働行為であること、調査の矛先が市職員にとどまらず、広く市民・府民、国民に向けられていることを指摘。調査の完全中止とデータの即時廃棄を求めます。大阪市議会では3月2日、日本共産党市議団長の北山良三が、調査そのものの違憲・違法性について、橋下市長を厳しく批判し、府労委の勧告に従い自らの責任で調査をただちに中止し、データの廃棄と職員・市民への謝罪を求めました。一歩も引かない白熱の質疑には、他党議員から「MVP賞をあげる」と声がかかりました。
 市民の批判に追い詰められた大阪市特別顧問・弁護士の野村修也は、4月6日、回収データと用紙を廃棄しました。
 市労組組合員ら55人(のちに59人)は7月、「アンケート」は違憲だとして提訴。地裁・高裁ともに「憲法上の権利の侵害」があったと認定し、大阪市に賠償を命じました。

「2条例撤回」を求めて        

 「教育基本条例案」「職員基本条例案」(第91話参照)が「維新議員団提案」として府議会にだされたのは11年9月でした。その違法ぶりに、「私は自分の目を疑った」という府教育長の中西正人、総務部長の小西禎一は猛反発し、維新議員団と激しい論戦を交わします。
 大阪府立高等学校PTA協議会は、「学校の役割や保護者として何をなすべきか真剣に考えた」と、役員の総意として橋下知事と維新の会府議団に教育基本条例案撤回を求める嘆願書を提出。教育長を除く5人の府教育委員が、「可決されたら総辞職する」との見解を発表します。「府立高校の9割にわたる教職員が反対署名に応じるなど、オール教育関係者のかつてない共同がひろがった」と小林優(当時大教組書記長)は語ります。
 維新提案の2つの条例案は大幅変更を余儀なくされます。しかし、ダブル選をへて、知事・市長提案として、12年3月に府議会、5月に大阪市議会で可決されました。(次回は「2013年参院選」です)

(大阪民主新報、2022年5月22日号より)

 

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