「民意に逆らう『大阪都』構想論議」 日本共産党大阪府委員会政策委員会
橋下・「維新の会」が狙う「大阪都」づくりへ、「大阪府・大阪市 特別区設置協議会」(以下、「法定協議会」)が急ピッチで会合を重ねています。
「大阪都」は、2010年1月に橋下知事(当時)が突然かかげたものでした。一口にいえば、政令市である大阪市・堺市をつぶし、その権限と財源を「大阪都」(府)に吸い上げ、「一人の指揮官」によってやりたい放題できる仕組みをつくるものです。橋下氏は、2011年の知事・大阪市長ダブル選挙で「大阪市はつぶしません」と虚偽のビラをまき、勝利するや、「『大阪都』は民意を得た」と、ゴリ押ししてきました。 しかし、それから2年、「大阪都」をめぐる状況は、一変しています。
「大阪都」構想論議がいかに民意に逆らうものか。問題点を探ります。
1、堺市長選挙に示された民意――「大阪都ノー」
「大阪都」をめぐる「民意」を、誰の目にも鮮やかにしたのは秋の堺市長選挙でした。
「大阪都」論戦は勝負あり
橋下氏は、堺市をつぶさなければ「大阪都」はできない、「今回は質の違う総力戦」と叫び、全国から国会議員、地方議員総動員で市長選に臨みました。
しかし、橋下氏らの「大阪都」論戦はたいへん稚拙なものでした。
――すでに「大阪都」の「制度設計(パッケージ案)」をだしていながら、市長選では一言もふれませんでした。語ればボロがでるとみたのでしょう。逆に、橋下氏は、「メリット・デメリットがわからないのだから、市長選に負けても『都構想が悪い』とならない」と初めから逃げを打っていました。
――「大阪都」の理由づけはコロコロかわりました。「政令市はもうダメ」論に始まって、「オリンピックを呼べる大阪に」「『大阪都』に入らないと、堺が孤立する」「堺に『都庁』をもってくれば発展する」。その一つ一つが論破されていきました。
――最終盤、「大阪都は最後は『住民投票』で決まります」といいだしました。しかし、橋下氏がタウンミーティングでクルクル説明を変えたことや、昨夏〝住民投票は「区割り」を問うだけ。「大阪都」の是非は問われない〟とのべたことが暴露され、吹き飛びました。
堺市民の良識の前にペテンは通用せず、「維新」は大差で敗れました。「大阪都ノー」の「民意」は鮮明でした。
堺市長選ショックで戦略変更へ
市長選惨敗を受け、「維新」は「大阪都」戦略を手直しします。
「毎日」の報道などによると、10月に開いた「都構想推進本部会議」にだされた内部文書では、橋下代表に対する市民の評価は「権力への挑戦者(大阪人好み)」から「権力者へ(大阪人嫌い)」に変わったとあります。
そして、「大阪都」の「住民投票」に「敗北すれば大阪維新壊滅」だと危機感をあらわにして、こんな手をうちだします。
――これからは、「維新色をできるだけ排除」して、経済界や著名人で「任意団体」をつくり、「非維新、政治無関心層も巻き込む」。
――「都構想そのもの」ではなく、「再編の向こう側」にある「夢」を訴える。
――そのため24区ごとに運動をおこす。
目先を変え、どんな策を弄しても「大阪都」はやりぬく構えを見せています。
2、府民的にも「大阪都」は「反対」が「賛成」を上回る
大阪府民の世論も大きく変化しています。11月の「朝日」調査では、「大阪都」にたいする「反対」が初めて「賛成」を上回りました。これと軌を一に橋下市長の支持率も、知事時代79%、ことし2月の61%から、今回は49%と初めて5割を割りました。
橋下・「維新」と「大阪都」の正体が見抜かれつつあることのあらわれです。
橋下・維新のもとで、大阪のくらしと経済はより悪化した
第1に、「大阪都」は、府民のくらしを立て直すものではまったくありません。
橋下氏が知事就任以来5年半、「大阪都」の提起から3年近く、府民所得の落ち込み、失業者数、非正規労働者の増大などがいずれも全国ワーストクラスになるなど、くらしと大阪経済はより悪化しています。「市政改革プラン」による市民サービス削減が強行され、公明党の大阪市会議員ですら、「橋下さんのおかげで、生活が良くなったと感じている大阪市民はいるのか。みんな『派手なサーカスはもういい。パンをくれ』と思い始めている」と語りました(「産経」昨年9月30日付)。
日本政策投資銀行関西支店は2月、「大阪における百貨店業界の展望」で、梅田をはじめ大阪の百貨店の店舗面積が2年間で1・5倍に増えたのに、売上高が増えない。その主因は「消費者の給与水準が上昇せず、消費性向も低下」にあると分析しました。
賃金が上がらず、福祉は切り捨てられ、庶民のくらしは悪化し、それが「商都大阪」を冷え込ませている。ところが、橋下氏も、「大阪都」構想も、ここにはメスをいれません。逆に、福祉はさらに削り、官民の賃金引き下げ競争をあおりたてるばかりです。
りんくうゲートタワービルとWTCの失政を「二重行政」に求めるペテン
第2に、「二重行政」論のペテンです。橋下氏は、「二重行政」のムダの典型として、りんくうゲートタワービル(府)とWTCビル(大阪市)の失敗をあげます。しかし、これは実態とかけ離れています。
――りんくうゲートタワービルも、WTCも、もとは関西財界・大企業による企画が行政にもちこまれたものでした。
――両者とも、当時の「大阪湾ベイエリア開発計画」のなかに位置づけられました。その背景には、「10年間に630兆円」を国内公共事業に使うという「日米構造協議」があり、需要見込みのない巨大プロジェクトが次々と計画され、破たんしていきました。
――この巨額のムダと浪費に、「なんでも賛成」してきたのが「オール与党」です。
メスをいれるべきは、こうした政治の歪みこそです。ところが、「大阪都」構想は、それらがすべて「しくみ」の問題だとすりかえ、真の責任と原因を帳消しにするのです。
「大阪都」の名による「なんでも民営化」「市民財産切り売り」論への批判
第3に、橋下・「維新」が「大阪都」の名によって「なんでも民営化」と「市民財産切り売り」を狙っていることです。
「維新」の顧問、堺屋太一氏によれば、彼らのいう「ニア・イズ・ベター」とは、「特別区」づくりで完結せず、「官より民」に行き着かせるもので、その先取りが「大阪都」だといいます(『「維新」する覚悟』)。それを地でいくように、橋下市長は「地下鉄民営化」案につづいて、市立幼稚園19園の廃止・民営化案を12月議会に出し、うち14園は否決されました。今度は松井知事が泉北高速鉄道の株を米ファンド(投資会社)に売却する案をだし、橋下市長は「これぞ錬金術」とのべました。しかし、この案は16日の府議会本会議において、「維新」からも4人が反対。否決されました。府民の良識が暴走を打ち破ったのです。
3、法定協議会――「大阪都」の破たんとごり押しぶりがくっきりと
「法定協議会」では、橋下市長と松井知事の「意をくんで」だされた「制度設計(パッケージ案)」の論議がすすめられています。これは大阪市をつぶし、「特別区」を5つ、あるいは7つ設置する案とそれぞれ「北区・中央区分離案」「合体案」の計4案をだし、「事務分担」「職員体制」「財政調整」など8項目で、「大阪都」の設計図を示したものです。
法定協議会は、わが党から山中智子大阪市議団幹事長が参加し、橋下市長、松井知事、各会派の府議・市議ら20人の構成です。
そこでの議論の特徴を一口でいえば、「破たん」と「ゴリ押し」です。
「制度設計案」のボロが次々と
「パッケージ案」がだされた直後から、ボロが次々とでてきます。
マスメディアで日本共産党の質問を大きくとりあげたのが、「大阪都」による「節約効果」をめぐるウソでした。「大阪都」をつくったら「二重行政解消」で「4000億円が浮く」(松井知事)としていたのが、「パッケージ案」では、「700億円」とされました。しかし、ここには「二重行政解消」に何の関係もない「地下鉄民営化」による「効果額」なども含まれていました。市議団がそれらを除いて計算すれば、「9億4000万円」にすぎないことを試算して追及したのです。
他にうかびあがっている問題は、主な点だけをあげても重大、かつ深刻です。
・国保も、介護も、情報システムも「特別区」には分けず、76事業を束ねた「一部事務組合」で担う――「区民」の声は届かず、議会のチェックもあいまいです。そもそもこれでは一体何のための「特別区」づくりなのか、根幹にかかわります。
・「財源」のない「特別区」――財源不足は深刻で、橋下市長が「使うべきでない」としていた「土地売却」によってやっと予算が組めるものです。
さらに「財政調整」は「都区協議会」でやるといいますが、結局は「都」のいいなりになる危険性が強いものです。
・「特別区」は職員も、庁舎も不足する――「パッケージ案」では、「5区案」で500人、「7区案」で2200人もの職員が不足するとしました。庁舎も「民間ビルを借り上げる」とされ、10以上のタコ足庁舎となるところもあり、住民は右往左往します。
・大阪府が「財政再生団体」に転落する――府(都)に大阪市の借金を移すと残高8兆円に。国が計算方法の変更を認めないと、府は新たな借り入れが制限され、福祉やくらし切り捨てが国に迫られる危機に直面します。
――126本の法令改正がなければ、「大阪都」ができない――地方交付税の算定基準変更や「一部事務組合」についての「特例」設置など、総務省の回答でも、大きな疑問符が投げかけられています。
すべて小手先でとりつくい、「5区案」論議に流し込む
しかも、「法定協議会」の議論の進め方のひどさです。
毎回の「法定協議会」では、自民、民主からも「大阪都」そのものへの異論、批判があいつぎます。しかし、会長の浅田氏(維新・大阪府議会議長)は、それは「済んだ問題」「協議の対象外」と封殺します。
また、「節約効果」額が問題にされると、「大阪都」で長期的に経済効果があることを「有識者会議」をつくって検討してもらうと、新たなペテン策をだす。「特別区」間での「財産」格差が問題にされると、「財産管理」も「特別区全体でやる」といいだす。「法改正」が間に合わないと指摘されると、「事務処理特例条例でも対応できる」(橋下氏)といいだす――あらゆる問題を小手先の「修正」でのりきろうとしています。
こうした乱暴な議論のうえに、12月6日の法定協議会では「財政シミュレーション」が出されました。狙いは「7区案」より、「5区案」の方がマシという数字をはじきだすためのものですが、橋下氏は、「そろそろ5区案にまとめて論議を」と、何が何でも「住民投票」へこぎつけようと必死です。
府民丸ごとにかかわる大問題なのに「住民投票」は大阪市民だけという矛盾
さらに、「大阪都」構想論議の大問題は、ことは大阪府民丸ごとにふりかかる重大な制度変更なのに、いまの大阪府政と府財政がどう変質するのか。正面から議論されないこと。また大阪市民以外は、はじめから「住民投票」のらち外に置かれていることです。
4、「制度設計(パッケージ案)」の6つのペテン
「大阪府・大阪市特別区設置協議会」で、いま論議を進めているのは、「府市・大都市局」が「知事・市長の考えを具現化」して出した「大阪における大都市制度の制度設計(パッケージ案)」です。
これをもとに昨年12月まで6回議論がありました。そこでだされた主な問題点をみるだけでも、「大阪都」構想がいかに無理無謀なものかがわかります。
「特別区」づくりの意味をなさない「一部事務組合」問題
その第1は、「一部事務組合」問題です。
「パッケージ案」は大阪府・市の事務を「都」と「特別区」に無理矢理分けるのですが、「国民健康保険」「介護保険」など94の事務が分けられない。「特別区」同士でつくる「一部事務組合」で一括して担うとします。
東京都は23区がそれぞれ担い、一般市でも通常担っています。ところが「特別区」は、「中核市以上の権限」という触れこみなのに、これらの事務は担いません。「一部事務組合」なら、「議会」はあっても、議員を住民が直接選ぶことはできません。「国保料値下げ」などを求める直接請求運動もできません。
住民自治を遠ざけるものであり、どこが「住民に身近なサービスは特別区で」「ニア・イズ・ベター」でしょう。「市を5~7区に分割する効果を疑われるのではないか」(「東京都政新聞」昨年8月23日付)などと東京からも問題点がつきつけられますが、「維新」側の反論はありません。
財政がもたない「特別区」
第2に、重大な問題が財政問題です。
「パッケージ案」の組み立てはこうです。①大阪市の財産は「特別区」に承継する(決まってもいない地下鉄民営化の株も!)②債務(借金)は「大阪都」に承継し、その償還(借金返し)は「都」が3割、「特別区」が7割を負担する③法人市町村民税、固定資産税、特別土地保有税、さらに地方交付税も「財政調整財源」とし、その合計の24%を「都」、76%を「特別区」に分ける
しかし、これで果たして「都」も「特別区」も成り立つのか。最初から、次のような問題が次々指摘されました。
――「特別区」ごとの「普通財産」に25~49倍の格差が生じる。
――「都」が借金漬けになり「財政再生団体」に陥る危険がある。
――「特別区」は相当な収支不足が続く。しかし、「固定資産税」などの課税権限は「都」に奪われ、「財政調整」という名の「都のひもつき」でなければ財源確保策がない。
さらに「財政調整財源」に「地方交付税」を入れるのは、「特別区」を「国のひもつき」にするもので、「国の理解を得るのも容易ではない」(「読売」昨年8月26日付社説)と実現性も疑わしいものです。
一般職員が最大2200人足らない
第3に、職員配置の問題です。
「パッケージ案」は、「特別区」をたちあげるためには、行政職員が最大2200人不足し、技能職員は逆に最大1100人過剰になる。それを技能職員の行政職員への転任と新規採用、再任用で補うといいます。
しかし、万一、秋の「住民投票」で「大阪都」が決まっても、来春4月1日まで半年もありません。公明党委員も、こんな短期の大量採用は「ありえない」とのべます。大阪市のここ数年の新規採用は120人前後です。
しかも、この試算は府内の「中核市5市平均」をもとに、機械的にはじいたものです。昼間人口問題や単身者世帯、貧困層の多さなど大阪市特有の条件は加味されていません。
さらに乱暴、ずさんなのは、「職員不足」を騒ぎ立てて出発するのに、「都」になれば、「最終年度」に1800~4800人削減できると財政見通しをたてていることです。
「大阪都」は最初から8兆円もの借金残高に
第4に、「大阪都」は借金漬けです。
「パッケージ案」では、大阪市の借金はすべて「都」に移します。いまの府の借金残高5兆数千億円が、8兆数千億円にふくれあがることに、きびしい意見が寄せられます。
「実質公債費率が30・5%と、財政健全化団体に転落する水準になる」(公明党委員・第8回協議会で)。「府・市を合わせて、借金は8兆2000億円に! 大阪都構想は、まさに大阪破たん構想だった!!!」(自民党大阪市会議員団ビラ)
これを切り抜けるために、「政府が財政健全化指数の算定方法を変えるよう要望する」といいますが、きわめて危ない橋です。
全国の地方債市場のなかで、大阪府債と大阪市債は8%を占めます。「大阪都」構想に関心を寄せる野村證券は、制度設計いかんでは、「市場の信頼が毀損され、大阪府・大阪市ともに資金調達環境が悪化する可能性もゼロではない」(野村資本市場クォータリー 2013年秋号)と指摘しています。
法律を126本変えないと「都」はできない
第5に、「大阪都」は、いまの法律を126本改正しなければできません。事務分担、財政調整などで東京都と異なる場合、事務分担で123本、財政調整で5本、都区協議会で2本(一部重複)、いまの法律に抵触するからです。
「大都市局」は「総務省と調整中」としますが、各省庁からは「なぜ特別区が中核市並の権限を担うのか?」「特別区が事務を処理するために職員体制や専門性の確保が図れるのか」など、基本点での質問が寄せられます。
橋下市長は、第8回協議会で、「やろうと思えば、事務処理特例条例というものを活用できる」といいだしました。
国会で「特別区設置法」をつくったのはダブル選挙直後、中央政党が「維新」にひれ伏す形でした。いまやそんな「風」はありません。橋下氏の発言は、それを念頭においたものでしょうが、そんな「裏技」のどこに「大阪都」の大義があるのでしょう。
効果は「過大」、コストは「過小」
第6に、「パッケージ案」は、「大阪都」実現の「効果」は「過大」、「コスト」は「過小」に見積もったものです。
当初、松井知事が掲げていた「効果」は「4000億円」でした。ところが「パッケージ案」は最大「976億円」。これには、「大阪都」とは無関係の府市の事業再編や住民サービス削減など706億円を入れたものでした。日本共産党大阪市議団が精査すると、「二重行政解消」なるものの「効果」は、せいぜい「9・4億円」にすぎません。各紙も、「『水増し』批判は避けられない」(「読売」昨年8月10日付)、「都構想 大揺れ皮算用/コスト減試算 1千億円?9億円?」(「朝日」10月19日付夕刊)と指摘します。
一方、「コスト」を「過小」にするために、たとえば新たな「特別区」の「庁舎」はつくらず、不足は「民間ビルを借り上げる」といいます。日本共産党山中智子市議団幹事長は「区によって不足分は小学校2~3校分になる。結局はタコ足庁舎となり、窓口ごとに行く先が不明・バラバラ。住民の利便性など眼中にない」ときびしく批判しています。
「5区案」に絞り込むというが
――「修正案」「財政シミュレーション」による新たなペテン
批判があいつぐなかで、12月の第10回「法定協議会」に、新たな「修正案」と「財政シミュレーション」がだされました。
「修正案」は、「地下鉄民営化」の効果額が違うとか、「職員削減」の起点が違ったなど、当初案のずさんさを認めるものでした。
加えて「修正案」は、「ネットワークシステムも特別区全体で共同使用」「区間格差をなくすために普通財産も共同活用」といいだしました。新たなとりつくろい策ですが、いよいよ「大阪市分割」の道理のなさを示します。
「財政シミュレーション」も、新たな問題がうかびあがります。
――「7区案」は、2033年度に約1500億円の累積赤字が発生などという数字がでました。それで「5区案」としかいえなくなっています。
――「5区案」(北・中央区分離)では、「2022年度には収支不足が解消」「2033年度の単年度収支では約220億のプラス」といいます。しかし、「収支不足」解消の財源は、橋下市長が「市政改革プラン」の際には禁じていた「補てん財源の活用」――土地の切り売りなどに頼るものです。
――数字の前提は、税収の伸びが毎年1・7%、職員削減の効果が「最終年度」の「総配置数達成」で117億円などとするものです。その根拠が不確かなうえ、いずれも「大阪都」への「再編」とは無縁なものです。
「財政シミュレーション」の議論はこれからです。ところが、橋下市長は「5区案(北・中央分離)」をごり押しする構えです。
「法定協議会」では、「大阪都」の是非そのものを問う議論があとをたたず、当初スケジュールは大幅に遅れています。しかし、だからといって、勝手にもちだした4つの案では財政面でよりマシに見えるというだけで、問答無用に「5区案(北・中央分離)」でつきすすむことが許されるはずがありません。それは、「大阪都」構想の制度設計の破たんと橋下氏の焦りようを示すものです。
5、「大阪府」のあり方の一大変質が不問に
最後に、「大阪都」は、「大阪府」のあり方を一変させます。ところが、「法定協議会」ではこれが正面から議論されていません
「大阪の統治機構の変革」を叫びながら
そもそも「維新の会」によれば、「大阪都」は「大阪の統治機構を変える」ものでした。2011年秋にだした「大阪都推進大綱」では、大阪府と大阪市・堺市による「大阪都構想推進協議会」で「大阪都」の所管事務――大規模開発、「成長戦略」、警察、消防から災害復旧、広域の危機管理、雇用対策などを「協議しなければならない」としていました。
ところが、「都」の制度設計は横におかれ、「財政再生団体」への危惧もあるのに、「都」の「財政シミュレーション」はありません。
そもそも姑息なやり方ですが、国会でだされた「特別区設置法」は、「大阪都」(この名称は、この法律にはありませんが)をつくるためには、まず大阪市民の住民投票でOKとされてしまいました。衛星都市の住民は、「大阪の統治機構」のあり方について、是非を意思表示できないのです。
それでいて橋下氏は、昨秋の堺市長選挙で、「大阪と堺が動いたあと、周辺に『大阪都』にはいってきてもらう。最終的には19区ぐらいに」とうそぶいています。
鮮明なのは「カジノ」「リニア」だけ?!
「強い広域自治体」という展望も、鮮明なのは「一人のリーダー」によって、「カジノ」や「リニア」につっこんでいく姿です。年末に「カジノ」誘致への「大阪府市IR立地準備会議」初会合で、橋下市長は、これが「大阪都構想のための試金石」とのべています。
◇
前回(昨年12月22日付)と今回、2回にわたって主な問題点をみてきましたが、「大阪都」構想は、民意に逆らう危険な「大阪破壊計画」です。いま求められているのは、「法定協議会」でうきぼりになる問題点の一つ一つを徹底検証、吟味したうえで、この構想を白紙に戻し、「大阪都」をストップすることです。民意を反映した異論、批判のすべてをごまかし、覆い隠して、前にすすめるなど絶対に許してはなりません。
(2013年12月22日付「大阪民主新報」より)