政策・提言・声明

2020年07月24日

「大阪市廃止=都構想」Q&A 2020年7月

 11月1日に「住民投票」へ、コロナ禍でもごり押しする維新。一体なぜ、なんのために? 「そもそも編」「特別区設置案編」「コロナ対策編」の3つにわけ、それぞれQ&Aで見てみました。

目次

(そもそも編)

Q1 そもそも「大阪都」って?
Q2 2015年にやったのになんで?
Q3 「二重行政解消」ならええんでは?
Q4 大阪市、堺市以外は関係ない?
Q5 各政党の態度は?
Q6メディアはひたすら持ち上げるが?

(「特別区設置案」編)

Q7 「住民サービスが低下する」って?
Q8 「中之島合同庁舎」って?
Q9 「介護保険」はどうなる?
Q10 「財政調整」頼みって?

(コロナと住民投票編)

Q11 なんでこんな時に「住民投票」?
Q12 「ポスト・コロナ」で求められているのは?
Q13 どうしたら勝利できる?
Q14 日本共産党の役割は?

そもそも編)

Q1 そもそも「大阪都」って?

 大阪の行き詰まりを「改革」でなく、「大阪市つぶし」で

 「大阪都」構想は2010年、橋下徹知事(当時)が「維新の会」結成と同時に掲げました。「大阪市を廃止」し、「大阪府の権限、財源を巨大化すれば、大阪が発展する」というものです。
 「ベイエリア開発」の失敗など、大阪の政治、経済はゆきづまっていました。私たちは、そのおおもとに自民党政府と府も大阪市も関西財界主導の「オール与党」体制という問題があり、その改革こそ急務と訴えました。
 ところが橋下氏はここには手をつけず、直面した深刻な財政問題も、「大阪市を廃止」し、その権限・財源を「府」に吸い上げれば解決できるといいだしたのです。
 あれこれの理屈で飾りますが、その本質は、①大阪市をなくす、②市をバラバラにしてつくる「特別区」にはくらしを守る財源や権限がなくなる。③「一人の指揮官」でやりたい放題の体制にする、というものです。
 日本共産党は、くらしも自治も破壊する構想として、きっぱり反対しています。

※ご存知ですか

「都構想」といいますが、「住民投票」で大阪市が廃止されても、「大阪府」は「府」のままです。「都」にするためには大阪府民の住民投票なしにはできません。
 また一度、大阪市のような政令市を廃止・解体すると、元に戻す法律はありません。

Q2 2015年に「住民投票」をやったのに、なんでまた?

 「ラスト・チャンス」を何度でも

 そのとおりです。2015年の「住民投票」で市民は「大阪市廃止=都構想NO」の審判を下しました。法にもとづいて決着がついたのです。
 「維新」は、住民投票を「究極の民主主義」(松井一郎代表)と叫ぶのに、その住民の意志を尊重しないのです。
 しかも、あの住民投票の際、維新は「ラストチャンス」「二度目の予定はありません」と訴えていました。
 また「維新」は昨年の知事・大阪市長ダブル選挙で、「二度目の住民投票」の民意を得た、などといいますが、同じ投票日の大阪市議選では「都構想反対」をかかげた議員が過半数を占めました。
 「二度目の住民投票」など、何重にも市民を裏切る行為です。
 しかも、それをこのコロナ禍のもとで強行しようというわけですから、どこまで市民無視の態度をとるのでしょうか。

Q3 「二重行政解消」ならええんでは? 

 新型コロナ対策などは府も、市も、「二重」「三重」にやるべきもの

 市民が困る「二重行政」って、どれほどあるのでしょうか。橋下氏らが叫んだ「WTCビルとりんくうゲートタワービルの失敗」は、「府と市がバラバラ」のせいではなく、「府も、市も、ゼネコン浪費開発にのめりこんだ」せいで失敗したのです。
 しかも、前回住民投票の時に、松井氏らは「府と市を合わせると、4000億円の財源が生まれる」といいましたが、公明党さえ「試算すると1億円」(府・市財政の0.001%)といい、いまは府・市当局はみずから「財政効果」がいえません。
 逆に、維新は市民のいのちを守るために大事な「住吉市民病院」を「二重行政」だといって無理矢理つぶしました。その解体工事は、コロナ禍のこの3月から始まりました。
 市民にとって必要なことは二重にも三重にも行うのが地方自治体の役割です。例えばコロナ対策で全国の都道府県と市町村がそれぞれ市民や業者への支援策にとりくんでいるのを見れば明らかです。

Q4 大阪市、堺市以外は関係ない?

 「大阪府」も変質。大阪全体の大問題

 「都構想」は大阪市やもう一つの政令市・堺市だけの問題ではありません。
 何よりも、「大阪府」が変質してしまいます。維新は「特別区」をつくれば、「住民サービスは基礎自治体で担う」「大阪府は成長戦略を担う」といいます。「大阪府」は市町村とともに「住民福祉の向上」を本来の仕事とする自治体ですが、これからは「府」の仕事はもっぱら大阪湾岸部の開発などで、「住民福祉」や市町村との協力は二の次になりかねません。
 大阪経済のエンジン役、「母都市」となってきた大阪市の廃止がもたらす経済的影響もはかりしれません。
 また大阪市が廃止され、「特別区」が設置されると、その周辺の自治体――北は豊中市から、東大阪市や南は堺市などは、「住民投票」をしなくても、その議会で過半数が望めば、自動的に「特別区」に編入される仕組みがあります。そうなれば府に財源、権限は吸い上げられ、住民サービス切り捨ての危機に直面します。

Q5 各政党の「都構想」にたいする態度は?

 「維新とその野合勢力」vs「市民と野党の共闘」のたたかい

 「特別区設置案」の議決(法定協議会)では、維新・公明と自民党府議団が「賛成」し、日本共産党と自民党市議団が「反対」しました。
 公明党は2017年総選挙では、「都構想反対」を叫び、「自公協力」で議席を得ました。2019年ダブル選挙では自民党と一緒に「都構想に最終決着」を訴えました。それが今度は、維新から“次の総選挙では対立候補を立てるぞ”と脅かされ、屈服し、賛成にまわりました。
 自民党府議団にも自民党内や支持者からの反発が広がります。
 野党は、日本共産党はもちろん、立憲民主党、国民民主党、社民党の各府連もこぞって反対で一致しています。平松邦夫元大阪市長らも「市民アピール」をだしています。大阪市内の地域振興会のなかからも声があがっています。
 住民投票をめぐって「維新とその野合勢力」対「市民と野党」という構図がクッキリしています。

Q6 メディアはひたすら持ち上げるが?

 在阪メディアに求められる「公正な報道」

 最近も、新型コロナ問題で吉村知事が連日在阪テレビ局に出演し、「大阪モデル」の科学的な検証は横において、吉村氏の一言一言をそのまま垂れ流すメディアの姿勢が目立ちました。
 これまでも「橋下劇場」などといって、維新を紙面や画面で飾れば「数字がとれる」と言い放つメディア幹部もいました。
 住民投票で求められるのはこれが果たして市民のくらしや大阪の今後にとってプラスなのか、マイナスなのか。その冷静な検証です。ところがメディアはいかに維新が公明を屈服させてきたかなど「政局報道」にあけくれています。
 メディアのなかにも「歯切れ良い言葉やイメージに惑わされず、批判的な目で、検証と分析を地道に行うこと。この10年の教訓だ」(「毎日」7月15日付「記者の目」)との言葉も聞かれるようになっていますが、メディア本来の役割として、権力を監視し、「公正な報道」に徹する姿勢こそ求められます。

(「特別区設置案」編)

Q7 「住民サービスが低下する」って?

 いまの大阪市の住民サービスは「維持」できない

 「特別区設置案(協定書案)」の致命的弱点は、大阪市がすすめている住民サービスが「維持」できないことです。
 大阪市は、これまで政令市ならではの力で、18歳までの医療費助成、地下鉄・市バスの敬老パス、ひとり親家庭医療費助成、新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入利子補助など独自の住民サービスを実施してきました。「給食費無償化」方針も政令市ならではです。
 ところが大阪市廃止・分割には膨大なコスト・経費がかかるため、特別区は財源がなくなり、これまで大阪市の大きな財源を背景に実施してきた独自の住民サービスは維持できなくなります。
 一般市がもつ「水道」「消防」などの権限も「特別区」にはありません。
 困った公明は、設計図に「現行サービスを維持すると書いてほしい」と嘆願したものの、「特別区設置時点には維持する」というだけ。もはや「向上」は誰もいわず、「特別区移行後」は切り捨てられる危険が濃厚です。

Q8 「中之島合同庁舎」って?

 もはや「自治体」とはいえない姿に

 「特別区設置案」のもう一つの大問題は、「中之島合同庁舎」問題です。
 これまで新しく設置する4つの特別区には、新庁舎を設置するとしていました。ところが、これには600億円程度が必要で、これではもたないと、公明党が「コストを抑えてほしい」と要望。そこででてきたのが、「いまの大阪市役所・中之島庁舎を、合同で使ったらいい」という奇抜な案です。
 こうなると新しくつくる「淀川区」の職員は78%、「天王寺区」は49%が「北区」の庁舎に間借りすることになります。
 自治体にとって、庁舎機能はきわめて重要です。様々な行政サービスの拠点であるとともに、災害時の復旧・復興の拠点ともなります。そのため、自らの自治体の区域外に本庁舎がある例は、鹿児島と沖縄の離島を除けば存在しません。
 地域に足を踏み入れなければ、職員は住民や街のニーズをつかめません。「特別区」の看板であるはずのニアイズベターが、公明と維新の政治的取引によって、さらにゆがんだ制度設計となりました。

Q9 「介護保険」はどうなる?

 巨大で奇怪、住民の声が届かない「一部事務組合」

 介護保険は、いま大阪市は政令市で日本一高い保険料となっており、市民の批判と引き下げや減免に対する要求はきわめて強くなっています。
 ところが、いまの「特別区設置案」によると、「介護保険」を担当するのは「特別区」でもなく、「府」でもない。4つの「特別区」でつくる「一部事務組合」が担当するというのです。
 大阪府・市の事務を「府」と「特別区」に無理矢理分けようとすると経費がかかるため、「介護保険」「システム管理」などは分けられない。そこで120もの事務を、4つの「特別区」がつくる「一部事務組合」で一括して担うのです。年間予算6400億円、400人の職員を抱える、「もう一つの自治体」です。しかも、そこには住民が直接選出する議会はありません。
 「介護保険料値下げ」などを求める直接請求運動もできなくなります。
 「二ア・イズ・ベター」どころか、市民の声をよせつけず、住民自治を遠ざけるものでしかなく、公明党もかつては反対の急先鋒でした。

Q10 「特別区」には「財政調整」があるから大丈夫っていうが?

 財源なき「財政調整」

 「特別区」の財源、権限は「府」に大きく奪われます。維新は「府と特別区の財政調整があるから大丈夫」といいますが、本当でしょうか。
 実は、財政が豊かな東京都でも、この「都」と「区」の「財政調整」は大問題です。都の「特別区協議会」は「都区制度は、もはや時代遅れ」「都区間で行っている財政調整を廃止する必要がある」とさえ提言しています。
 まして財源は国からの地方交付税に頼らなければならないのが大阪です。
 ところが今回の「特別区設置案」によると、4つの「特別区」それぞれの必要経費をだして交付を受けるのでなく、今後も「大阪市」が存続しているとみなして計算します。そんなことをすると、「特別区」に実際に必要な額が200億円程度も不足するといわれます。これでは「18歳までの医療費助成」などは吹っ飛びます。
 維新は、この件での試算を示そうとしていません。こんな大事な情報を示さないまま住民投票するなど論外です。

(コロナ対策編)

Q11 なんでこんな時に「住民投票」?

 コロナ禍の住民投票は二重三重の暴挙

 大阪市のHPには、住民投票をめぐる市民の声が紹介されていますが、その大半は、「コロナ禍のいま、なんで住民投票?」です。
 当然です。いまは新型コロナ対策に、政治的立場をこえてとりくむべき時です。こんな時に、市民に「分断」をもちこむ「大阪市廃止=都構想」議論をすすめることは、コロナ対策をすすめるうえでも障害です。
 万一、住民投票で可決されれば、2025年までに無理やり「特別区」を設置するために府・大阪市の職員が山のような仕事に追われ、新型コロナ対策どころではなくなります。
 おまけに、いまの「特別区設置案」には、「コロナ」の「コ」の字も前提にありません。受けている経済的打撃、税収の落ち込みなどを考えても、いまの「財政シミュレーション」は役にたちません。
 にもかかわらず「住民投票」を強行するなど、二重三重の暴挙です。
 新型コロナ対策でいえば、大阪市からの10万円給付金給付は全国的には7月初めには7割の世帯に届いているのに、大阪市の給付率は政令市の中でも最低の17.6%(3日時点)です。「都構想よりコロナ対策」を!

 驚くのはコロナ禍のもとでの松井市長の公務日程です。4月以降の3カ月間を例にとると、91日のうち55日間も「公務日程なし」。「府市一体」だから市長の仕事はしなくていいとでも?

Q12 「ポスト・コロナ」で求められているのは?

ポスト・コロナ、新しい大阪像を共に

 コロナ問題は、これまでの大阪の政治・経済・社会のあり方の根本的転換を求めています。
――これまで削減し続けてきた保健所や病院、公衆衛生研究所などの機能と体制を一刻も早く立て直す
――「インバウンド(外国人旅行者)頼み」ではなく、庶民と中小業者のふところを温めることを軸にした大阪経済政策の転換
――20人程度の「少人数学級」を子どもたちにプレゼントし、どの子も生き生きと成長する教育の実現
――これらをささえる「公」の役割と機能の抜本的強化
「大阪市廃止=都構想」はこれらにとっても百害あって一利なしです。
 いまの「特別区設置案」は破棄し、これからの大阪市のあり方を一から議論すべき時ではないでしょうか。

Q13 どうしたら勝利できる?

 もっとも広い層を結集して

 住民投票が強行されるなら、私たちは正面から受けて立ち、「大阪市廃止=都構想NO!」の審判を下します。
 そのカギとなるのは、もっとも広い大阪市民の良識を結集することです。
 2015年に「反対」票を投じた方をはじめ、「都構想はそもそもあかん」と考える方の輪をさらに広げましょう。
 さらに「維新や吉村さんはええけど、『大阪市廃止=都構想』はどうか」と考える方も多数います。「維新を支持するかどうか」の選択ではなく、「大阪市をつぶしていいかどうか」がものさしです。維新の「実績」を「評価」する方でも、それらを含め、いまの大阪市ならではの住民サービスが削られることが伝わるなら、「それはあかん」となるでしょう。
 加えて、「『都構想』はええかもしれんが、コロナ禍のこんな時の住民投票は反対」という方も多数結集しうる状況が生まれています。
 もっとも広い層を結集して、勝利しようではありませんか。

Q14 日本共産党はどうたたかう?

 論戦の力、共同の力、草の根の力を発揮して

 「御党だけは、維新に終始一貫、対決してきた」(元民主党衆院議員)――日本共産党は、「都構想」に、大阪でも、国会でも反対をつらぬいてきました。維新に屈服した公明党や自民党大阪府議団の態度とは対照的な姿です。
 2015年の住民投票でも、日本共産党は「明るい民主府政をつくる会」「大阪市をよくする会」のみなさんとともに、「論戦の力」「共同の力」「草の根の力」を発揮してたたかいました。
 今回も、「特別区設置案」の破たんぶりを示すともに、コロナ問題の教訓を生かして、希望ある明日の大阪への提言を示して、たたかいます。
 立憲民主党、国民民主党、社民党の大阪府連も「都構想反対」は明瞭です。「市民と野党の共闘」を大きく広げます。
 ビラやSNS、つどい、懇談、たたかいの先頭にたつ党員・読者の拡大など草の根の活動を広げます。
この党とご一緒に、「都構想ストップ」へ、声と運動を広げましょう。

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