政策・提言・声明

2012年08月01日

「大阪都」法案(特別区設置法案)について

2012年8月1日
日本共産党大阪府委員会 委員長 山口勝利

○ 民主、自民、公明など7会派は、橋下大阪市長が掲げる「大阪都構想」を後押しするため、衆議院に「大都市地域における特別区の設置に関する法案」を共同で提出しました。これはきわめて大きな問題をはらむものです。

○ 法案は、大阪市をはじめ人口200万人以上の政令指定都市において、「大阪市」などの「関係市町村を廃止」し、「特別区」を設けることができるようにしたものです。提案者はこの法案の理由として、「地域の実情に応じた大都市制度の特例を設けるため」とのべています。
 しかし、大阪府・市において、こうした法案が必要な「実情」はありません。
 第1に、橋下・「維新の会」は、「大阪経済の低迷」などの行き詰まりの原因はあげて「大阪府・大阪市」という大都市制度にあり、「大阪都」ができれば打開できると主張してきました。ところが、その立証はできず、最近になると「さまざまな要因のなかの一要因と認めてもらえれば、『大阪都』論議を」(橋下市長)などとごまかしています。
 第2に、「大阪都」構想は昨秋のダブル選で「民意を得た」ということも事実に反します。ダブル選挙において、橋下氏と「大阪維新の会」は、その法定ビラにおいて、「だまされないで下さい!!大阪維新の会は、大阪市をバラバラにしません」「大阪市は潰しません」「24区、24色の鮮やかな大阪市に変えます」と訴えました。「大阪市を廃止」することも、いまの「24区」を「8~9区の特別区」にすることも示さず、ペテンで「民意」をかすめとったのでした。
 第3に、国会での提案者となる民主、自民両党も、大阪では「大阪都」構想に反対しています。大阪府市でつくられた「大阪にふさわしい大都市制度協議会」において、「経済の低迷、住民自治が大都市制度に起因するものか?」(自民党府議)、「都構想は基礎自治体を不完全なものにし、都市としての重要な機能を広域に集約。分権化に逆行」(OSASAみらい市議)などと疑問と批判が唱えられています。
 さらに大阪のもう一つの政令市である堺市は「大阪都」構想をきっぱり拒否しています。
 加えていえば、大都市制度にさまざまな問題が生じていることから、第30次地方制度調査会での論議が始まったばかりです。なんの結論もでないまま、こうした法案が国会にだされることの拙劣さは目に余ります。

○ 本法案の中身でいえば、たとえば「大阪市」を廃止し、いくつかの「特別区」を設置する場合、当然議会の議決だけではなく、住民(選挙人)による投票が必要とされていますが、衛星都市の住民には賛否を表明する場は与えられません。しかし、橋下・「維新の会」の主張によれば、「大阪都」(この名称は使えず、「大阪府」のままですが)は、「大阪市を廃止する」だけでなく、「大阪の統治機構を変える」ものです。それを府民の3分の2を占める衛星都市の住民には、賛否を問うことなく、移行することなど許されるはずがありません。
 さらに、本法案によると、今後たとえば堺市や豊中市など、単一の市がそのまま「特別区」に移行する際には、当該自治体の議決だけでよく、住民の賛否を問う場はなくても構わないとされます。
 これは「自治」の名に値するものではありません。

○ 結局、本法案は、「大都市制度」のさまざまな問題を解決するという現実から要請されたものではなく、ダブル選挙で勝利した橋下・「維新の会」の「風」にすり寄る諸党の打算によって提出されたものにすぎません。
 橋下氏らの「大阪都」構想は、わが党が指摘しているとおり、①大阪市を解体し、その財政・権限を吸い上げて、「1人の指揮官」に与え、②それをもっぱら「成長戦略」の名で、「なにわ筋線」「淀川左岸線延伸」、さらには「関空リニア」「カジノ」などの巨大開発構想に注ぎ、③それを「驚天動地の行政改革・公務員制度改革」という名の恐るべき市民・府民犠牲と府・市職員犠牲によって生み出そうというものにほかなりません。
 本法案は、府民・市民にとって何の大義も道理もないものです。

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