政策・提言・声明

2012年06月22日

「市民のための仕事をすすめる」市役所へ

大阪市の「公務員改革」についての提言

2012年6月22日
日本共産党大阪府委員会

 橋下市長は、「市政改革」の大きな柱に「公務員制度改革」をおいています。しかし、それは市民の願いにこたえた市役所をつくるものでしょうか。

「大阪市役所問題」の根源

 橋下市長は、「市役所ぐるみ選挙」や「人事介入」、一部労組の「特定政党支持しめつけ」をはじめ、これまで長年続いてきた大阪市役所のなかでの腐敗ぶりをあげ、それを口実に「公務員改革」を叫び、憲法違反の「思想調査」である「アンケート調査」を「業務命令」でおこなうなど、徹底した攻撃をすすめています。

 大阪市役所のなかでの幹部職員や一部労組を含む腐敗について、わが党は、その根源をついて、徹底批判してきました。

 第1に、それは関西財界いいなりのもと、日本共産党を除く「オール与党」体制によって利権を守るためにきずかれてきたこと、

 第2に、「解同」(部落解放同盟)との癒着のなかで、乱脈・不公正な同和行政が長期にはびこり、それが不明朗な人事にまでつながっていたこと(橋下市長や野村弁護士など「調査チーム」は、なぜかこのことについては沈黙しています)、などです。

 こうした腐敗を市役所内から一掃することは当然です。

 しかし、橋下市長のやり方の大問題は、これらを口実にしながら、特異な公務員攻撃を加えていることです。それは①「公務員は市民に対して命令する立場」(4月の新規職員発令式)などと、市職員を「市民への命令者」に仕立て上げ、「市長の顔色をみて仕事するのが当然」(3月市議会でわが党議員の質問に)とうそぶく。②「職員が民意を語ることは許しません」(就任後初の施政方針演説)と言い放ち、市民の声を役所に反映することも、正当な政治活動をする権利も認めない。③そして、「業務命令」で思想良心の自由を踏みにじる「思想調査」をおこない、職員をしばりつける、などを特徴としています。

 橋下市長は卑劣にも、こうした攻撃のテコとして、「公務員は身分が保障されている」「給与も高い」とか、「公務員=敵」とあおりたて、市民との分断をはかっています。

 これでどうして市民のための仕事を意欲をもってすすめることができるでしょうか。それは憲法が規定する、公務員は「全体の奉仕者」という立場を蹂躙し、橋下市長の「下僕」にするという最悪の公務員づくりにほかならず、市役所内の「腐敗」を「恐怖政治」におきかえるものです。

 日本共産党は、すべての職員、市民のみなさんに、こうした橋下市長のやり方を次の方向で転換することをよびかけます。

(1)「市民の安全・安心、福祉のためにいい仕事を」
自治体としての使命にたった職場をつくる

 くらし破壊の攻撃が深刻になるもとで、その防波堤となり、市民を守る自治体とその職員の役割が今日ほど重要になっているときはありません。また東日本大震災は、いのちと財産、安全を守る自治体のあり方をおおもとから問いかけました。

 大阪市職員も被災地に真っ先にかけつけ、震災救援・復興の最前線にたちました。また「市政改革プラン・PT試案」で他都市との「面積比較」を理由にコミュニティ・バス(赤バス)への補助の大幅削減が打ち出されたことにたいし、「赤バスは面積を運んでいるのではない。人間、お年寄りを運んでいるのだ」と必死に訴えた職員など、多くが「市民の安全・繁栄なくして、市職員の真の幸せはない」との立場で職務にあたっています。

 それはもうけ第一の民間ではできない公務労働を担うことこそ公務員本来の使命だからです。またいまの制度のもとで、地方公務員が国の悪政の一端を担わされる面を強いられるもとでも、暮らしと福祉を守る地方自治体の職員としての使命があるからです。

 市役所の職員は何よりも市民に顔を向け、市民のなかにとびこみ、市民のための提案を行政のなかでおこなってこそ、公務員としてのやりがい、働きがいがでてきます。職場づくりや人事評価も、これを基準にしたものにすべきであり、「競争主義」「成果主義」「相対評価」などをもちこむべきではありません。

(2)市民のくらしを担うにふさわしい市職員の権利と条件を保障する

 一部幹部の厚遇や「裏金」などの腐敗、ムダをなくし、市役所の機構を、簡素で効率的なものにすることはいうまでもありません。同時に、公務労働を担う市の職員の権利と労働条件を守ることは国際的に見ても、当然の考え方です。国連の専門機関であるILO(国際労働機関)は「職員にたいする人間らしい労働・雇用条件を土台にしてこそ、『公共サービスの価値』、その質と効率性が保障される」(2005年 ILO「公共サービス改革における社会対話の強化のための実践ガイド」)とうたっています。

 この点で、公務労働を担う職員は非正規(大阪市役所内では12%)ではなく、正規労働者を原則とすべきです。

 日本では公務員の労働基本権が奪われ、その代替制度として、給与も人事院勧告にもとづいて決めるルールを決めています。公務員給与引き下げと民間給与引き下げを互いのテコとする賃下げ競争はストップさせます。これは大阪経済の立て直しにもつながります。

 また橋下市長は、憲法に保障された市職員の政治活動を不当に制限し、罰則を与える条例案を準備していますが、政府が「違法」だと指摘したのは当然です。そこで今度は「懲戒免職」の条項を盛り込もうとしていますが、違憲・違法の企ては中止すべきです。市職員を「全体の奉仕者」から「橋下市長の下僕」にさせる「大阪市職員基本条例」は廃棄させましょう。

(3)市役所の仕事は、憲法、地方自治本来の精神にもとづいてこそ

 橋下市長は「服務規律」を叫び、「服務に従わない公務員は市役所を出て行って欲しい」とまでいいます。しかし、「服務」というなら、その原点にあるのは、入庁時の「宣誓」どおり、「私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを固く誓います」「私は、全体の奉仕者として、市民の信託による公務を民主的且つ能率的に運営すべき責務を深く自覚し、誠実且つ公正に職務を執行することを固く誓います」(職員の服務に関する条例)という点にあります。

 「思想調査」のような違憲・違法な「業務命令」に従う義務などありません。

労働組合の役割について

 こうした市の職員の仕事をすすめるうえで労働組合は大きな役割をもっています。

 とくに橋下市長による無法な市の職員労働組合攻撃が加えられているもとで、①市の職員の生活・権利を守るためにたたかう、②自治体変質や破壊攻撃を許さず、広範な市民と共同・連帯し、大阪市の市政改革の先頭にたつ、③職場で住民に奉仕する行政へと改善するための仕事にも労働組合として取り組むなどの活動が求められています。

 そのためにも一部組合に見られる当局との癒着や「特定政党支持義務づけ」などの弱点については、市民目線でみずからただすことが求められます。

 こうして市の職員も、労働組合も、市民も、真の「市政改革」のために社会的連帯の精神で手をくみ、たちあがろうではありませんか。

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