政策・提言・声明

2007年06月15日

宮本さん品川さん対談
憲法・貧困・格差問題について語る

「憲法9条を守れば世界が変わる」 と熱く語る経済同友会終身幹事の品川正治さん。
「弱者を助け、 巨悪に立ち向かう」 ことを信条に、 夏の参院選大阪選挙区に挑む宮本たけし前参議院議員。 
2人が参院選の焦点にもなる憲法改定、 貧困と格差の問題について対談しました。 

日本共産党前参院議員大阪選挙区候補 宮本たけしさん
「歴史前に進めるため頑張る」

経済同友会終身幹事 品川 正治さん
「社会変革は国民にしかできない」

宮本 大阪民主新報の新年号では山下よしき元参議院議員が対談でお世話になりました。 あれからも品川さんは 「憲法9条を守ろう」 と、 全国各地で講演されていますね。
 改憲の動きが強まっているときに、 財界のリーダーでおられる品川さんが 「憲法9条を守ろう」 と訴えておられることは、 大変、 心強く思います。

経済界の中でも同じ考え多い 

品川 ある 「九条の会」 の講演会で、 「財界にも品川さんのような考えの人はいますか」 という質問がありました。 「経済界の中で孤立していませんよ」 と答えました。
 経済団体にもよく講演に呼ばれています。 参加者は大企業の経営者ですが、 「東京の大企業に、 自分たちと同じような考えをもつ人がいるとは驚きだ」 という感想文が目立ちます。
 ある経済団体の講演会では、 質疑応答で 「執行部が改憲路線を進むとしたら許せない」 など改憲派への批判が相次ぎました。

宮本 経済同友会の記者会見 (5月31日) では、 政治委員長をされている伊藤忠商事の丹羽一郎会長が、 経済団体が9条改定を提言することに異論を唱えておられましたね。

押し付けられた市場原理主義

品川 私の講演は、 参加者が市民でも経営者でも同じ話をしています。 中国戦線での戦闘の体験を通して、 「戦争を起こすのも人間なら、 戦争を起こさせないために努力ができるのも人間」 ということを座標軸として生きてきたこと、 小泉内閣以来、 「日米は価値観を共有する」 といっているが、 ずっと戦争をしているアメリカと、 二度と戦争をしないという憲法を持つ日本の価値観はまったく違うこと、 世界でアメリカから自立する流れ、 戦争を許さない流れが広がっているときに、 日本国民が国民投票で改憲にノーといえば世界が変わる、 今 「国民の出番だ」 と訴えています。

宮本 品川さんは、「今なら、 戦争を起こそうとしているのが誰なのかは分かりやすいが、 いざ事態が緊迫してくると、『A国が攻めようとした』 『自衛のためだ』 という話にすり替えられ、 戦争を止めることも複雑になる」 と指摘されています。
 日本の過去の戦争を正当化する 「靖国」 派は、 「ABCD包囲網、 欧米諸国による日本への経済制裁に対抗した、 やむにやまれぬ戦争」 「自尊自衛の戦争」 といっています。 しかし、 経済制裁に至ったのは、 日本が朝鮮や中国に侵略していったからです。

品川 当時は 「満蒙が生命線」 だ、 他国の領土を 「生命線」 といって侵略しました。 それを 「自衛」 の戦争という靖国史観には無理があります。

宮本 今、 安倍内閣は、 憲法解釈を変更して、 「集団的自衛権の行使」 を可能にしようと議論しています。 「集団」 の相手であるアメリカは、 イラク戦争を起こし、 今後も自国の意に沿わない国に対しては、 先制攻撃型の戦争を行う方針を明らかにしています。 とても 「自衛」 などと言えるものではありません。

品川 小泉さんは、 「アメリカの敵は日本の敵」 とまで言いました。 アメリカが言う 「グローバリゼーション」 は、 経済用語ではなく、 アメリカが勝つために世界を動員するための戦略用語です。

戦争でもうける人々もいる  

品川 私はこれまで、 若い人に、 戦争になれば、 ①すべての価値観が転換させられる、 敵国民や自国民の命よりも 「勝つこと」 が優先されること、 ②労働力も学問もすべてが戦争に動員されること、 ③三権分立が歪められ、 戦争指導部が国家の中枢を握ることになると話してきました。
 紛争があっても戦争にはしないというのが日本国憲法の立場です。 しかし、 紛争を戦争にしたらもうかる人たち、「戦争を起こす人間」 が存在していることも、 若い人たちに伝えたいと思います。
 私が会長をしている国際交流センターは、 アフリカや中南米の貧困者を救済する仕事をしています。 アフリカでは紛争が絶えませんが、 すべて戦争になるわけではありません。 紛争が戦争になる国は、 石油、 ダイヤモンド、 金、 ウランが採れる国です。
 政治の統治に失敗して、 国民の不満を外国に向けるために戦争を仕掛けるケースもあります。

宮本 日本の企業の6割がサービス業、 99%が中小企業です。 戦争でもうかるのはごく一部の人で、 圧倒的多数の経営者は 「戦争なんて、 やめてもらいたい」 となるんじゃないでしょうか。

品川 戦争でもうけられるのは一部の大企業です。彼らは、戦争になればアメリカのような軍産複合体になれるとみています。 アメリカをマーケットにしているので、 アメリカの経営者とも近い感覚があります。 そこに改憲への衝動があります。

宮本 一握りの集団のもうけのために、 「戦争する国」 にする、 そんなことは許せない、 この声を集めて、 9条を守り抜きたいですね。

品川 私は今 「9条世界会議」 の準備のお手伝いをしています。 世界のノーベル平和賞受賞者を招いて、 憲法9条の値打ちを討論する集会を来年5月、 千葉・幕張メッセを主会場に開きます。 ニューヨークの 「9・11テロ」 の被害者の遺族たちは、 「イラクの人々に我々と同じ目にあわせるな」 と平和運動をしています。 これが本当の平和主義、 9条の精神の発揮だと思います。 彼らも招きたいと思っています。

宮本 憲法の問題とともに、 今。 国民が悲鳴を上げている貧困と格差の問題が、 大きな焦点になっています。
  「生活保護の申請を拒否されたために餓死しかけた」 「国民健康保険料などの値上げで、 食費を削っていた。 医者から栄養失調と言われた」 など、 人間の尊厳が奪われる人々をつくりだす政治を私は許せません。

品川 戦後日本は、 経済の成長の果実は国民に分け与えるのものだという考え方でやってきました。 ところが、 小泉内閣、 安倍内閣のもとで、 成長の果実はすべて資本家や株主のものだというアメリカ型の資本主義に日本を変える政治が進められ、 市場原理主義が押し付けられました。
 戦後、 日本では従業員や国民のことを考える人でなければ、 社長をやるべきでないというのが、 当たり前でした。
 今の経営者は、 市場や株主から 「もっと利益をあげろ」 「コストダウンせよ」 と迫られて、 株価の上下で一喜一憂し、 いい技術を開発したら 「企業が乗っ取られるのでは」 と心配しなければなりません。 従業員や国民のことを考える余裕がなくなっています。
 政府は、 「改革がなければ成長なし」 といって、 大企業の自由のための 「規制緩和」 を進めました。 これでは地方の企業や中小企業はやっていけません。 雇用はめちゃくちゃにされました。 元に戻すのは大変な仕事でしょう。
 GNPを1%引き上げるために100兆円近いお金を企業のために使う。 そのお金を家計部門から調達するため、 年金や福祉を削り、 税金や保険料を引き上げてきました。

宮本 貧困と格差の打開は、 立場の違いを超えて、 国民が共有する課題です。 私たちは、 税制、 社会保障、 雇用政策の 「三つの転換」 を求めて闘っています。 また、 税金の無駄遣いの点検と一掃、 「棄民政治」 を告発して国民の生存権を守る運動に取り組んでいます。

市場原理にまかせてはいけない

品川 福祉、 教育、 環境は市場原理にまかせてはいけない、 人間の努力が必要な分野です。
 雇用のルールに関連して言えば、 実は国際交流センターの就業規則は国連本部と同じなんです。 男性にも産前産後の休暇があり、 女性が結婚しても職場では旧姓で通します。
 保守政党の政治家は、 選挙のときは、 「政治は市民社会のためにある」 と話をせざるをえませんが、 当選した翌日から、 企業社会のための仕事をします。
 このギャップについて、 訳が分からなくしたのが、 小泉内閣以来の 「改革」 という言葉です。 誰のための 「改革」 か、 一言も言いません。 これに引っ掛かってはいけません。 「財政再建」 「小さな政府」 「官から民へ」 というもの、 誰のための政策かを問うことが大事です。

宮本 私たち日本共産党は、 貧困と格差を広げてきた 「構造改革」 や 「規制緩和」 の路線に真正面から対決し、 政治に福祉の心を取り戻そうと呼び掛けてきました。 日本経済と社会の前途を考えるとき、 経営者のお立場からみても、 それが必要だとのお話に意を強くしました。 日本社会の前途を憂う経営者の方々との対話と共同を広げていきたいですね。

品川 憲法施行60年の間、 日本の支配政党は、 憲法9条を守ることを一度も決意したことがありません。 「二度と戦争はしない」 という国民の決意と正反対の政治が60年間も続いているのは、 世界史の中でも希有なものです。 自民党が社会民主主義的な政策を部分的に取り入れて、 所得の再配分や社会保障をある程度やってきたから、 長期政権を維持できたように思います。
 ところが、 アメリカ型に近づこうとすればするほど、 国民生活を守る政策が切り捨てられ、 国民とのギャップが広がり、 世界からもおかしいと思われています。
 憲法を守ること、 政治を変えることは、 主権者、 国民にしかできません。 国民が 「改憲にノー」 「戦争する国にはならない」 「アメリカのいいなりにはならない」 と言えば、 日本だけでなく、 世界が変わります。

宮本  「日本国民が世界史を動かすことができる時代に遭遇している」 という品川さんのお話に、 壮大なロマンを感じます。 歴史を前に進めるために頑張ります。

しながわ・まさじ
 1924年兵庫県神戸市生まれ。 44年、 徴兵で露国戦線へ。 東京大学法学部卒。 日本興亜損保 (旧日本火災) の社長、 会長、 経済同友会副代表幹事、 専務理事を歴任し、 現在、 同終身幹事。 国際開発センター会長。 全国革新懇代表世話人。 著書は、 『戦争のほんとうの怖さを知る財界人の直言』 (新日本出版社)、 『9条がつくる脱アメリカ型国家  財界リーダーの提言』 (青灯社) ほか。
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