政策・提言・声明

2006年11月26日

あいつぐ同和利権、不正事件の根源に異常な大阪府の同和行政が「解同」の生き残りと、法終了後の同和利権システムを作った責任は重大

日本共産党大阪府委員会政策委員会

 乱脈な同和行政と「同和利権」があいついで明るみに出て、大阪の同和行政にたいする府民の批判が噴出しています。国の同和対策のための特別法(「地対財特法」)は2002年3月末で終了しており、同和地域に特別の事業をおこなう法的根拠はなくなったにもかかわらず、同和行政と利権・特権が続く背景には、大阪府政が果たしてきた特別の役割があります。「同和利権」の一掃、同和行政の終結のためには、「解同」の生き残り策に全面協力して、同和行政・特権の永続化のシステムを作り、府下自治体に押しつけている大阪府の「人権=同和」行政を改めさせることがいよいよ重要になっています。

府政と利権あさりで「同和貴族」といわれるほどのゆがみを生む

 大阪では、同和対策特別法下の1969年から2001年度までの33年間で、2兆8000億円を越える同和対策事業が実施されました。同和地区の生活、環境は改善し、結婚や就職などの差別もおおきく解消しました。一方で、これらの同和対策事業が、「解同」言いなりで実施された結果、「逆差別」「同和貴族」という言葉も生まれるほど不公正や利権あさりが横行、重大なゆがみを生んでいますが、いずれにしても同和行政は一日も早く終結すべき時代を迎えています。

 ところが大阪府は、同和対策特別法の終了にさきだって01年3月に「大阪府人権施策推進基本方針」を制定。02年10月には「地対財特法失効後の同和行政について(通知)」で府下市町村に対し「部落差別が現存する限り問題解決のために施策を進める必要がある」と同和行政の継続を要請、事実上「解同」が支配し、「解同」の住民支配と行政介入のシステムである同和事業促進協議会を「人権協会」に衣替えして市町村の「人権施策などの推進のための協力機関」と位置づけるよう“指示”しています。

 「差別がある限り同和行政は継続」というのは、同和行政の目的と性格を無視した「同和行政無限責任論」ともいうべき暴論ですが、これは法終了に危機感を募らせた「解同」が「第三期の部落解放論」として持ち出したものを大阪府がそのまま採用したものです。

 「解同」は、この大阪府通知を「最大限に活用して自治体交渉を」(解放新聞02年10月28日号「主張」)と大喜びして、府下すべての自治体で首長(一部助役)の出席で交渉をおこない、人権協会の発足、一般施策の積極活用、人権のまちづくりなどを約束させています。こうして旧同和行政のない自治体にも「人権協会」が設置され、人権協会への分担金や同和問題を中心とする啓発・研修が強められる事態になっています。

108項目年間55億円を超える税金で一般施策の名で同和行政を“推進”

 大阪府は現在108項目、年間55億円を超す税金をつぎ込んで、市町村を巻き込んで一般施策の名で同和行政をすすめています。

 その一つ、府は市町村に28の事業を「同和問題解決に活用できる一般施策」一覧として示し、府が半額補助で法期限後も事業に取り組むよう押しつけています。府の事業費は06年に約18億1千万円余、市町村の半額負担を含めると36億を超す税金がこの事業に投入されています。

 その実態は、たとえば旧解放会館などで実施されている「人権相談事業」(政令市・中核市を除く40市町村に府が半額補助)は、一件あたりの相談にかかる費用が府平均で70万円、たとえば泉佐野市では相談一件に150万円をかけるなど、信じられないようなムダ使いがおこなわれています。しかも28事業の中には「総合生活相談事業」「地域就労支援事業」「進路選択支援事業」など、「人権相談事業」と同じような相談事業が行われており、府はこの4事業に06年4億円以上の補助金を予算化しています。

 また、日本共産党府会議員団の追求で、この28事業以外にも一般施策に移行した事業(事実上の同和事業)として80項目(38億円)が行われていることが明らかになりました。

「解同」が牛耳る人権協会に補助金交渉に知事も出席する一体ぶり

 大阪府の人権=同和行政でとくに重大なのは、事実上「解同」が支配する大阪府人権協会を「府と市町村が、様々な人権施策を推進していくための協力機関」と位置づけ、人権=同和施策推進に人権協会を「協議」などと関与させていることです。しかも、府人権協会へ、府下のすべての市町村からの分担金とあわせて約2億5千万円もの補助金・委託金をだしていいます。

 利権あさりで逮捕された 大阪市の小西飛鳥支部長、八尾市の丸尾安中支部相談役が、いずれも「人権協会」の幹部で、その地位を利用して行政支配をしていたことでも明らかなように、大阪府が人権協会を「協力機関」と位置づけたことが、「解同」幹部の行政への不法介入・利権あさりの最大の根拠となっているのです。

 大阪府は、人権協会はじめ「解同」関係団体へ毎年4億円を超す補助金・委託金を支給。さらに府が府同和促進協議会に無償で貸与していた浪速区内に所有する2つの建物(4億5744億円かけて建設)も無償貸与、この建物には解同中央本部大阪事務所、解同大阪府連、(株)解放新聞社、(株)解放出版社、部落解放・人権研究所、部落解放大阪府企業連合会などの事務所が入居しており、事実上「解同」の活動の支援までおこなっています。

 「解同」運動への協力は、「解同」関係団体の研修会へ府職員を159人(05年実績)も公費=税金で派遣。近畿2府4県では、同集会への職員の派遣は激減、兵庫県は一人も派遣しておらず大阪の派遣は突出しています。府は「解同」利権があいついで明らかになっている最中も、「解同府連」との交渉に知事が率先して出席する「解同」との一体ぶりです。

特別法終了後も一括返済求めず無利子のまま—異常な府の貸付

 9月府議会では党議員団の追求で大阪府同和金融公社(03年に地域支援人権金融公社に改称)への異常な貸し付けと、税金のムダ使いの実態も明るみにでました。

 大阪府は同公社へ、1969年以来無利子で毎年お金を貸し、1985年には貸付金の合計が70億4564万円にもなっています。貸付金は「府が必要と認めたときは、1ヶ月の予告期間をおいて公社に対し貸付金の返済を請求することができる。公社は、返還請求を受けたときは、速やかに返済しなければならない」とされています。しかし、府は、同和対策の特別法が終結後も全額一括返済を求めず、有利子に切り替えることもしませんでした。04年3月の貸付金残額48億4786万円について、府は、公社に貸し付けた府民の税金を運用させ、その運用益の一部で返済していくという同和金融公社に甘い返済計画をつくりましたが、その計画では全額返済に216年もかかろというとんでもないものです。そのうえ、公社が貸付金で外債を購入し4000万円以上の損失を出すなど、府民の税金がマネーゲームに使われていたことまで発覚しました。

「同和地区学力実態調査」を強行し“部落民づくり”に執着する知事

 法終了後も同和行政を継続する太田府政が直面している深刻な矛盾が「同和地区」実態調査です。

 大阪府のいわゆる「同和地区学力実態調査」をめぐって、調査対象とされた住民が「行政が新たな部落民づくりをするのか」と実態調査の中止を求めて裁判に訴える事態になっています。

 同和地区学力実態調査は、府下いっせいにおこなわれる学力テストを利用して、大阪府教委が、所持している旧同和地区の住所データーをつかって、特定の児童生徒を「同和地区生徒、児童」として選び出し、「一般地域の生徒・児童」との学力比較をおこなうというものです。

 同和地区と一般の格差が解消し、国の同和対策法も無くなり、「同和地区」が実態としても法的にもなくなっているもとで、比較そのものが無意味であるうえに、行政がいつまでも「同和地区データー」をつかって、特定の住民を「同和地区住民」と規定しつづけるなどは許されないことです。これでは、旧同和対策法でいったん「同和地区・同和地区住民」とされた住民は、これからは大阪府によって「同和地区住民」とされ続けることになります

 ところが太田府知事は、5月府議会で実態調査の中止を求める日本共産党議員の追及にもあくまで実態調査を強行すると回答、実施をめぐって府下市町村で大きな混乱を引き起こしました。府が5年ごとにおこなっている人権意識調査も「同和」へのマイナスイメージを拡大するなど、同和問題への誤った理解と偏見を生み出すものです。

ゆがんだ同和優遇の背景に知事とハンナングループ会長との癒着

 同和行政のゆがみの背景に、太田府知事と「同和食肉の帝王」といわれ牛肉偽装事件で逮捕された浅田満元ハンナングループ会長との疑惑の関係も指摘されています。

 大阪府は、浅田元会長が事実上支配する南大阪食肉市場(株)に25億円を無利子で貸し付け(10年据え置き)ていますが、このまま放置すると全く返済されなくなることも明らかになっています。日本共産党府議団は「返済不能状態とわかりながら貸し続けることは刑法の背任行為にもあたる。直ちに返済させよ」と迫りましたが、府は同社が事実上破綻状況に陥っている事を知った上で「これまでの経営努力に加え、経営改善策について検討がされており、貸付金の返済を求めることはできない」と答弁。他の民間企業への貸付事業ではあり得ない、ハンナン優遇の府のゆがんだ姿勢をうきぼりにしています。

同和行政の終結を求めるとともに府の「解同」言いなり行政に審判を

 同和利権の一掃、同和行政の終結は、税金のムダ使いをただすだけでなく、厳しい地方財政のもとでの府民要求の実現のためにも、行政の民主化のためにも、大阪の地方政治の重要な課題です。

 同和行政の終結を来年のいっせい地方選挙の重要争点としてうきぼりにするとともに、各自治体で具体的な実態をもとに同和行政終結を求め、大阪の同和行政のゆがみの根源となっている大阪府政の「解同」言いなり行政に厳しい審判を下すことが求められます。

 不公正乱脈な同和行政、「解同」利権に対して、日本共産党以外の各党は、まともに批判しないどころか、ほとんどの同和行政に賛成してきました。大阪市で、これほどの不祥事が明らかになったのに自民、公明、民主の各党は、真相糾明100条委員会の設置にさえ反対しています。これらの各党への審判もあわせて求められています。

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