大規模開発推進で財政・暮らし大ピンチ開発事業に見る府政の実態
日本共産党大阪府会議員団
(大阪民主新報 2005年2月27日付)
関西国際空港2期事業やりんくうタウン、安威川ダム…。府内でいくつもの大規模開発型プロジェクトが進行中です。太田房江知事は、こうしたプロジェクトについて、「大阪経済を下支えした」と言い、見直し・凍結論が高まっていた関西空港第2滑走路の2007年供用開始も強く推進しました。しかし、大阪経済の地位低下には歯止めがかからず、府財政は危機的状況です。
府は、01年策定の「行財政計画」で、「負の遺産の整理」を掲げていましたが、昨年12月の「行財政計画(案)2004年版」では、「負の遺産」の言葉は消え、「適切なリスク管理に努めながら、早期に事業効果が発揮できるよう取組」み、企業誘致については「低・未利用の状況にある府有施設等について、他用途への転用など有効活用を推進」する姿勢を明記。新年度予算案では、新日鉄堺など大企業私有地をも対象に、最高30億円の補助金、地元市とあわせれば計100億円ともいう支援策を用意して、新たな装いでベイエリア地域への企業誘致・再開発に乗り出そうとしています。
「主要プロジェクトについては、将来の大阪の発展に必要であるとの考え方のもとに進めてきた」「一定の下支え効果があった」。太田知事は、03年2月議会での日本共産党の代表質問に、こう答弁しました。
府民の消費減
国内総生産(GDP)の大阪版である府民経済計算でみると、長期不況とはいえ、全国的には90年代も上昇傾向ですが、府内総支出は96年をピークに低下。大阪経済の全国シェアは、90年度の8・4%から02年度には7・5%に落ち込みました。
実質府税収入は、90年度をピークに減少傾向で、関西空港をはじめとするプロジェクトが大阪経済を下支えしたと言える状況ではありません。
こうした大規模開発型プロジェクトを推進しなければ、大阪経済はもっと落ち込んでいたのでしょうか。
府民経済計算によると、府内総支出は、96年度の41・6兆円から02年度39・9兆円へと1・7兆円減少しましたが、この間の家計消費支出は19・9兆円から19兆円へと9千億円の減少です。大阪経済の落ち込みの半分以上は府民が消費を手控えたことによるものです。このことは、大阪市勤労者家計調査からも明らかです。
90年代後半以降、全国を襲った経済停滞は、橋本内閣による消費税増税など9兆円の国民負担増をきっかけにした消費不況が原因でした。
ところが、この間の府の施策は、不況や負担増から府民の生活や営業を守るのではなく、関西財界と足並みをそろえ、大規模開発で大企業に仕事を与える一方、90年代以降の「行革」で、府立高校授業料を全国一高くし、老人医療費助成制度を縮小するなど、府民の暮らしや福祉を切り縮めてきました。
5つもの開発
関西空港2期事業、阪神高速道路大和川線など3路線、国際文化公園都市関連公共事業とモノレール建設、水と緑の公園都市、安威川ダムの5つの大規模開発だけで、大阪府の負担は約4500億円。05年度1年間の府の支出額は約169億円にのぼります。
府が昨年11月から、住民税非課税世帯をも対象から除外してしまった老人医療費助成制度の予算額は、制度改悪前の03年度で、161億円(国制度負担分除く)。所得制限を厳しくした障害者医療費助成制度に必要な費用は同86億円でした。
大規模開発優先型から府民の暮らしと営業優先へと府政の方向を切り替えていれば、府民生活を下支えできたのに、逆の方向を進んだのです。
そして、大規模開発推進のための府債発行で、借金と利払いがかさみ府の財政は、2005年度末見込みで4兆9659億円の借金を抱え、全国最悪の危機的状況です。
税収の落ち込みが続くなか、こうした大規模開発型プロジェクト推進のためには、新たに借金を重ねるとともに、府民の福祉や暮らし・教育関連の施策を削減しなければ、事業費は捻出できません。
2007年度に財政再建団体転落の危機に直面しているなどとして進められている府の「行革」は、大規模開発を推進し、府財政と府民の暮らしをいっそう危機に陥れるものとなっています。
見直し時に逆に推進 関西空港2期事業
関西空港会社の負債は1兆4千億円で、長期借入金だけでも6400億円。累積債務は2156億円を抱えます(03年度決算)。同社は、2004年度中間決算で開港以来初めてとなる39億円の黒字を計上しましたが、年間90億円の政府補給金があってこそです。
航空需要も伸び悩み、04年1年間の航空機発着回数は10万2571回。02年に国交省が見直した需要予測から大きく乖離し、特に国内線は利便性の高い伊丹空港へのシフトで開港初年を除き最低の3万1446回です(図4)。
経営、需要両面から第2滑走路の建設は慎重にということは、02年末の財務、国交両大臣合意以来、指摘されてきました。
財務省の諮問機関、財政制度審議会は昨年12月、「関西空港については、需要実績が何度も予測を大幅に下回ってきたこと、中部国際空港・神戸空港が今後供用開始されることなどを踏まえれば、需要等が現状のままで2期事業を平成19年に供用開始することには慎重であるべき」と建議しました。
「既成事実を積み重ね、なし崩しで工事を進める公共事業の悪弊の典型」(04年12月7日「読売」)、「2本目の滑走路の完成を急ぐことには疑問を抱かずにはいられない」(04年12月11日「朝日」)などとマスコミも主張。つまり昨年は、2期事業を見直す絶好の機会だったのです。
繰り返し陳情
ところが、太田知事は、関西財界とともに、「関西、大阪経済のために、2本の滑走路をもつ国際空港はぜひとも必要」と強く第2滑走路の07年供用開始を推進。政府にも繰り返し陳情し、財務省原案内示直前の12月18日、谷垣禎一財務相と北側一雄国交相による大臣合意という政治決着で、政府は、2007年の第2滑走路限定供用開始のための新年度予算案を編成しました。
政府は90億円の補給金に加え、伊丹空港の発着規制で国内便の関西空港への強制シフトなど、関西空港への手厚い支援を続ける方針。しかし、2月17日に中部国際空港が開港。来春の神戸空港開港予定など、関西空港は、いっそう厳しい環境にさらされます。
太田知事は、今回の政府予算案について、「一言で言うと、逆転サヨナラ勝ちという感じ」とのべていますが、1兆4千億円の2期事業費のうち大阪府負担は1173億円、今年度までに934億円を支出し、来年度は46億8700万円の負担が待ちかまえます。
府は、新年度予算案に、関西空港の需要喚起のために2億1700万円の予算を新規に計上しています。このこと自体が、2本目の滑走路建設が、当面必要のないことを表しているのですが、太田知事は、財政難の中、関西財界と共同歩調で「なし崩しで工事を進め」たのです。
呼び込み型の破綻 りんくうタウン
関西空港開港インパクトを活用するとした先端産業誘致計画も破たんしました。関西空港対岸部に造成したりんくうタウン(318ヘクタール)は企業進出が進まず、03年4月から、土地の分譲収入で事業費をまかなう企業会計方式をあきらめ、定期借地方式を導入しました。
開発には、福祉や教育など府民生活にかかわる施策に使う一般会計からの財源は使わないという方針の抜本的転換です。
関西空港1期事業の埋め立て土砂採取跡地を住宅地として開発した「阪南スカイタウン」、箕面北部丘陵での宅地開発計画「水と緑の健康都市」の2事業も企業会計方式を転換。りんくうタウン事業とあわせて3事事業につぎ込む一般財源は、02年度以降、2343億円と見込まれています(図5)。
破格の優遇策
しかも、府は企業進出を促すために、破格の優遇策を講じます。
例えば、りんくうタウンに工場用地などを借りる場合、商業業務ゾーン以外では、基本賃料が1平方メートル当たり月額でおおよそ230円ですが、IT、バイオ関連といった先端産業分野であったり、従業員数、敷地面積などで一定の要件を満たせば、同137円程度にまで減額されます。基本賃料は、進出用地の広さや場所によって変わり、泉南市部分に進出したイオンモールの場合、基本賃料は同151円で、ここからさらに減額制度が適用されています。
同時に、10億円の補助金制度も設けました。適用第1号は三洋電機の太陽電池工場の二色の浜産業団地への進出でした。同社の会長は、知事の政治団体代表の井植敏氏。同氏は、03年の政治団体の新春の集いで、前年末、新工場の府外進出について知事から「叱られた」とし、「(知事から)どこの県にも負けない対策を取るというご返事をいただいたので、大阪で新しい工場を造ることを決心した」と内幕を紹介しています。
空き地を「埋める」ために、大企業をはじめ、進出企業に至れり尽くせりの府の姿勢に、りんくうタウンへの企業進出は02年度末の44%から今年1月には65%まで前進。しかし、04年度の契約状況は、分譲3件(0・4ヘクタール)、定期借地10件(4・8ヘクタール)で、面積比で90%以上が借地を選択。先端産業や国際的な企業を呼び込むというコンセプトは崩れ去っています。
りんくうタウンの総事業費は、公有水面埋め立て免許を取得した1987年当時1700億円。それが89年、5500億円に急膨張します。
増える事業費
折からのバブル景気による事業拡張に加え、阪南スカイタウンからの埋め立て土砂価格は、関西空港向けには1立方メートル当たり1090円が、りんくうタウン向けには1790円と約1・6倍の高値で、関西空港優遇のつけ回しが、りんくうタウンに押しつけられたことも背景にありました。
「バブル経済」がはじけ、りんくうタウンへの進出意欲を示していた企業群は、相次いで撤退。95年には駅周辺の商業業務ゾーンの分譲価格を1平方メートル当たり131万円を88万円に減額し、96年までだった開発期間を2012年までに大幅延長、事業費を7400億円へと拡大したのです。
地価が今後とも上昇するとの見込みで、起債発行額を656億円から3566億円へと拡大。利払いは183億円から1616億円へと9倍近くに膨れあがりました。
失敗の穴埋め
しかし、分譲は進まず、その後3度にわたって収支計画を見直し、現在の事業費は5900億円です。「バブル」期、大企業や外国企業のために進出の門戸を開きながら、撤退に際しては、違約金さえとらず、大銀行など金融機関には借金返済を続け、失敗の穴埋めには府民の税金投入して、空き地を埋めようとする…。こうした姿勢は、「地域経済の振興」とも大きく乖離し、太田知事がトップセールスで呼び込んだというイオンモールが、地元商業者らに打撃を与えるというように矛盾を拡大しています。
シンボルビルの売却 ゲートタワービル
りんくうタウン駅をはさんで2棟の超高層ビルをデッキで結んで空港へのゲートを象徴し、りんくうタウンのまちづくりの先導的役割を果たすはずだった「りんくうゲートタワービル」。結局1棟しか建てられず、96年のオープン後、一貫して不振が続き、周囲は空き地が広がります。
府企業局の同ビル内への全面移転でビル社の賃料収入を支援、府の貸付金150億円を補助金に変更して元利金を放棄するなど総額250億円の財政支援をしてきましたが、04年11月、ビル社を法的手続きで精算、債務関係を整理した上で、民間企業に売却する方針を決めました。
同ビル内にあるホテルを経営するビル社の子会社「りんくうゲートタワーホテル」は、2月1日、債務をビル社に付け替えて身軽になったうえで、営業権を新しく設立する府の第三セクター「大阪りんくうホテル」に無償譲渡しました。
新会社支援も
11月の事業再生スキームは、泉北高速鉄道などを運営する第三セクター「大阪府都市開発株式会社」と「ANAホテルズ&リゾーツ」社が出資するなどしてホテルを経営する新会社(大阪りんくうホテル)を設立、ゲートタワーホテルの営業権を譲渡し、ホテル社の金融機関債務76億7100万円をビル社に付け替え、府が新会社に支援を続けるというものです。
ホテル社の債務を付け替えられたビル社は債務超過に陥り、法的手続きを申し立てて破たん。府は、これまでの支援約250億円のうち、出資金51億円、貸付金22億3100万円も放棄しなければならない見通しです。りんくうタウンのシンボルの売却は、府の施策の頓挫を象徴するものです。
赤字生みだす定借方式 コスモポリス
和泉、泉佐野、岸和田各市の山間・丘陵部に先端産業団地をつくろうとしたコスモポリス計画も空港開港のインパクト活用をうたっていました。
府と地元市、銀行団、ゼネコンなどが出資した第三セクター方式での開発を目指し、87年から88年にかけて計3社が設立。先端科学技術の研究・開発企業群などを誘致する計画でした。
しかし、泉佐野コスモポリス(開発面積95ヘクタール)は、91年に予定地の約9割を買収したものの、進出予定企業が相次いで撤退、約638億円の負債を抱えて96年に破たん。98年に「株式会社泉佐野コスモポリス」と府、泉佐野市、銀行団等との間で民事調停が成立。府は出資金の毀損1億6千万円、同社への貸付金放棄が元本、利息、遅延損害金をあわせて99億5千万円、土地購入費130億5千万円の計約230億円を破たん処理につぎ込むことになりました。
府が買い取る跡地76ヘクタールは、公園として利用する計画で、府土地開発公社が銀行からの借り入れで先行取得。05年度から3年間で計155億円を投入する計画でしたが、府は「利用の見通しが立たない」としてこの計画を先送りする方針です。府の買収価格には府土地開発公社の銀行からの借入金への金利が上乗せされ、先延ばしにより、新たな府民負担が生じる事態になっています。
岸和田コスモポリス(開発面積153ヘクタール)は、02年12月、「株式会社岸和田コスモポリス」の取締役会で、事業の推進は困難と決議。用地を先行取得した民間企業6社が、府や岸和田市、コスモポリス社を相手取り民事調停を申し立てています。
3つのコスモポリス計画のうち、唯一事業化しているのがいずみコスモポリス(開発面積約103ヘクタール)。企業誘致状況は、全体130区画61・1ヘクタールのうち、111区画、51・2ヘクタールが契約済みで、契約率は面積で約83・7%です(03年10月現在)。
「いずみ」は、01年に分譲価格を28%値下げ、03年度までの間に、事業用定期借地方式と一定の条件を満たす企業に対する賃料減免制度を導入。企業進出は進みましたが、「いずみ」社の経営は急激に悪化、00年度決算で11億9500万円だった累積損失が03年度決算では149億3000万円に膨張、債務超過に陥りました(図6)。企業が進出するほど赤字が膨らむという異常な状態になっています。そして、同社は、分譲や賃料収入のほとんどを金融機関への返済にあてています。
「いずみ」社とともに、企業誘致に取り組んでいる「大阪府産業基盤整備協会」にも、一般会計から産業立地賃貸事業資金として04年度当初予算で131億円を貸し付け、新年度予算案では、173億円を貸し付けることにしています。
産業団地の姿も、当初予定した先端産業の立地という考え方から離れ、97年には、従来型のものづくりを示す「テクノステージ和泉」に愛称変更。
進出した企業の業種も多種多様。松原、堺の職業訓練校を廃校にして利便性の高い市街地の跡地を企業に売り払いながら、統合校は、駅から遠い「いずみ」に建設するなどしています。
コスモポリス計画は関空に便乗した産業誘致政策の破たんの象徴です。
治水、利水両面で不必要 安威川ダム
国際文化公園都市計画地の東側ですすむ、安威川ダム建設は、67年の北摂豪雨による災害を契機に、府が計画しましたが、その後の河川改修などで、当時のような豪雨にもダムを造らなくても「現在の河川断面で対応でき(る)」(府河川室)ようになっています。
その後付け加わった利水目的でも、ダムが不要なことは明らかです。
2010年の計画1日最大給水量を265万立方メートルとした01年の水需要予測に対応するために、安威川ダムが必要というのですが、80年以降、府営水道の1日最大給水量は、98年の212万立方メートルが最大で、それ以降200万立法メートルを超えたのは3年だけです。
03年度の外部監査では、この253万立方メートルを「妥当性を欠く水量となる可能性もある」とし、新たな水源開発についても、府営工業用水の余剰分11万立方メートルと大阪臨海工業用水企業団の解散で余剰となった12万立方メートルの計23万立方メートルの活用が可能だとし、「府が計画している複数水源の実現は『費用対効果』を十分に検討していくべき」としました。
府建設事業評価委員会でも04年、「水需要面からの必要性を十分確認するには至っていない」とし、危機管理面から府が主張する複数水源の確保についても「(安威川ダムの)1日7万トンという規模が、非常時において果たして投資に見合うだけの機能を発揮しうるかについて十分確認するに至っていない」とのべ、ダム本体工事の着工に待ったをかけています。
新たな数値を
ところが、府水道部は、今年1月の「水需要予測結果(案)」で、これまでになかった数値を持ち出したのです。
そこでは、2015年の1日最大給水量は多く見積もっても216万立方メートルと、これまでの予測を下方修正する一方で、「利水安全度」という考え方を持ち出し、少雨・渇水時対策のために必要な「水資源確保量」は、231万立方メートルだとするのです。
216万立方メートルなら、すでに決まっている臨海工業用水12万立方メートルの転用で十分可能。しかし、231万立方メートルを確保するためには、安威川ダムは必要というのが、府の狙いです。
たとえ、231万立方メートルの確保が必要だとしても、外部監査報告でも言及しているように、府工業用水11万立方メートルをあわせて転用すれば、233万立方メートルは確保できるのですが、水需要予測(案)が公表された昨年12月27日の太田知事のコメントは、「来年夏頃に安威川ダムの規模ならびにトータルな水源計画を決定したい」というものでした。
府自身が設けた制度や委員会が、疑義を呈していても、どんなに財政難でも、ダム建設は進めるというのが府の姿勢です。
「健康都市」や高速道路にも
「地価が下落していることや、当地における住宅需要動向を併せて勘案すると、当地において早急かつ大量の住宅地の供給事業を、府として実施する必要性は低下している」と検討委員会が判断した「水と緑の健康都市」事業についても、750億円の損失を府民の税金で補填して事業継続するとしました。
阪神高速道路大和川線建設では、利用交通量が計画から落ち込み続け、建設の理由は薄れているにもかかわらず、阪神高速道路公団が建設困難な一部区間を府事業として新たに約300億円を積みまして、建設することを決めています。
阪急の開発を手助け 国際文化公園都市
茨木・箕面両市にまたがる丘陵地742ヘクタールを、ライフサイエンス分野など研究開発拠点をつくるとともに、5万人が住むニュータウンを造成する国際文化公園都市計画。92年の都市計画決定以後、10年以上がたちましたが、まちびらきは昨年4月。現在約1300人が居住しています。
もともとこの地域は、60年代後半に阪急電鉄など民間企業が買収し、70年代の開発抑制基調の中で開発に着手できずにいたところを府が82年、総合計画で「国際交流と学術文化活動拠点の形成を目指す地域」と位置づけ、当時の「民間活力導入」の流れのなかで、府や茨木、箕面両市、阪急電鉄など地権者らが出資する第三セクター「国際文化公園都市株式会社」を設立(88年)、推進してきたものです。
現在、独立行政法人都市再生機構が土地区画整理事業を進めていますが、道路や街路、河川、砂防、下水道、公園など関連公共事業費は総額1700億円。うち大阪府は約4割を負担する計画です。府は04年度までに約246億円を支出、来年度は8億円をを支出する計画です。
住宅開発に伴う交通アクセスとして、府が出資する第三セクター「大阪高速鉄道株式会社」が運営するモノレールが乗り入れますが、高架建設などの府負担は105億円。鉄道事業が本業の阪急電鉄が主に住宅供給しているのに、阪急電鉄の負担はゼロです。
国際文化公園都市株式会社は、同都市のシンボルゾーンとなる、中部地区を中心にした文化学術交流拠点、ライフサイエンスの研究開発拠点を形成することを目指していました。その手法は、買収した土地に付加価値をつけて分譲、収益を得るという、基本的にはコスモポリス計画などと同じでした。
直接参画に道
しかし、97年からの経営改善策で、それまで買収した84ヘクタールの土地を阪急電鉄などの元の地権者などに売却して銀行からの借入金を全額返済することにしました。
同社は今後、シンボルゾーンの施設の誘致、企画に専念し、ゾーンを形成していくことにしています。
事業の行き詰まりが目立つなか、02年には、同計画地内の地権者である東洋不動産が、大阪府に13・5ヘクタール、約40億円と評価される東部地区の土地を無条件・無償で寄付。同社は、茨木市にもほぼ同じ面積の土地を寄付しました。
東洋不動産は、「彩都事業の推進に資するよう有効活用していただきたい」と申し出、府はこれを受託します。
翌03年にシンボルゾーンに阪急電鉄が有する土地と交換しますが、阪急電鉄は土地利用計画で住宅地とされている東部地区の土地を取得し、これまで直接事業に参画していなかった府と茨木市は、シンボルゾーンの地権者として登場したのです。
「大阪府、茨木市が新たに中部地区(一部)地権者となりましたことは、彩都カルチャーパーク形成に向けた推進体制が充実したものとして期待される」(国際文化公園都市社の03年度営業報告書)状態となったのです。
これまで、事業に間接的にしか参画していなかった府に、直接参画する道が開かれたのです。今後の府や茨木市の負担が危惧されます。