どうみる「大阪都」をめぐる異常事態
その解決の道は――法定協問題Q&A
「維新 独り舞台/自ら質問、野党『茶番』」(読売)、「維新 独演の法定協」(朝日)――「大阪都」構想を議論している「法定協議会」を「維新の会」が「ジャック」するという民主主義じゅうりんのクーデター的な暴挙にでています。
「オール維新」の11人だけで、急ピッチで会合を開き、この20日すぎにも「協定書」を「議決」。何が何でも、来春の「住民投票」に持ち込もうというのです。
いったい何故、こんなことが起きているのか?解決するには何が必要か。問答でみてみました。
Q1 なぜこんな異常事態に?
A1 「大阪都」構想論議が破綻した揚げ句の果てに
今回の事態は、橋下市長と「維新」が、自分たちの意に沿わない「法定協委員」を一方的に排除したことによるものです。
「法定協議会」は、「大阪都」構想の論議の場として設置されました。知事、大阪市長と議長、各会派の府議・大阪市議の計20人で構成。昨年2月以来、13回の会合が重ねられました。
当初、橋下市長らは「今秋に住民投票を実施し、来春から大阪都実現へ」と叫んでいました。ところが、「法定協議会」で議論するごとにさまざまな問題点が浮かび上がり、容易に前には進みません。それどころか、「維新」からの離党者が相次ぎ、府議会では過半数を失うなど、「大阪都」づくりは暗礁に乗り上げつつありました。
それを焦った彼らは、「法定協議会の議論が進まないのは、反対派議員が妨害しているからだ」と難くせをつけてきました。そして、府議全体では「維新」は半数以下に追い込まれているのに、たまたま多数となっている議会運営委員会をつうじて、府議会側の自民、民主委員、続いて公明委員を排除し、「維新」委員に差し替えました。「法定協議会を妨害している」というまともな証拠を示すこともなくです。
府議会過半数にあたる57氏は、暴挙を批判し、臨時府議会を開催して本会議の場で法定協委員を公正に選ぶことを求めています。
大阪市会側も、この異常事態が解決されるまで「法定協議会」には委員を出さないことを決め、同じく臨時市議会の開催を求めています。
しかし、松井知事、橋下市長は地方自治法を踏みにじり、議会開催を拒否。これには新藤総務相も「明らかな法律違反」と批判しています。その間に「法定協議会」での「協定書議決」を強行する構えです。
Q2 反対派は規約違反?!
A2 「法定協委員差し替え」には何の大義も道理もない
橋下市長らは、自民、民主、共産の委員は「大阪都」にそもそも反対し、「協定書」を作るための「法定協・規約」に反している。だから委員を差し替えるのは当然だ、などと言います。
しかし、こんな乱暴な理屈はありません。
――法定協議会において「大阪都」への反対意見を含め、「是非のそもそもを協議」することに何ら問題はありません。それは総務省も認めています。また橋下市長自身、法定協議会で、「大阪都」のそもそもを問う「入口論」も、やったらいいと語っていました。
――法定協議会の論議を閉ざしてきたのは、「維新」の側です。松井知事は、1月31日の法定協議会で、「維新」提案が通らないと、「法定協を閉じる議決を」と叫びました。橋下市長は、「出直し市長選挙」の挙にでて、当初の協議会日程をすべて吹き飛ばしました。「法定協議会」の浅田会長は、4会派連名による協議会開催要求も無視して半年も開かず、橋下氏の言いなりに「委員交代」を策し、混乱させてきました。
――「出直し市長選で委員交代の民意を得た」というのもあたりません。6億円の税金無駄遣い批判の中で、市長選は史上最低の投票率となり、橋下氏の得票も37万減りました。当時の世論調査では「法定協委員交代」について「反対」という声が過半数を占め、「賛成」の2倍以上となっていました(読売)。
Q3 知事・市長の「専決」も辞さない?
A3 「維新独裁」、地方自治法違反、民主主義破壊の暴挙など無効
さらに重大な問題は、「専決」問題です。
「大阪都」をつくるための「大都市特別区設置法」には、「法定協議会」で「協定書」が議決されたとしても、それを府議会、大阪市会に付し、両議会で可決されなければ、「住民投票」はできないことを明記しています。
しかし、すでに府議会、大阪市会とも、「維新」は過半数割れしています。おまけに、今回のような異常なやり方で「協定書」を議会にはかっても、その良識にかけて否決されることは必至です。
そこで、議会にかけずに、知事・市長が「専決」で決めてしまおうという狙いです。橋下市長は、「熾烈な、政治的な、これから論争していくのにね、こっちに与えられた権限を先に放棄するなんてことは、それはあり得ないですよ」と3日の記者会見で語っています。
しかし、地方自治法179条で「専決」がありうるとしているのは、「議会が成立しないとき」「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がない事が明らかであるとみとめられとき」「議会において議決すべき事件を議決しないとき」に限られています。今回のケースは、そのどれにも該当しません。
橋下市長はみずから「法違反」を承知しており、それにもかかわらず「専決」を強行するなら、まさに「維新独裁」の姿を示すものとして、政治的に最も手厳しい批判を受けるでしょう。また、こうした「専決」は無効だと葬り去るたたかいが求められます。
Q4「大阪都」の中身は?
A4 さらに浮かび上がってきた「大阪都」のボロ
異常なやり方とともに、「大阪都」構想の中身のひどさは、「維新独占」で開かれた2回の「法定協議会」をつうじても、さらに浮き彫りです。
最大のペテンぶりが、誰の目にもはっきりしたのが、財政問題です。「出直し市長選挙」で橋下市長はどの街頭タウンミーティングでも、同じパネルを出し、「これが肝」だとか、「大阪市のままなら赤字、大阪都なら黒字」「いまのままがいいのか、作り直すのか。これだけをみて、〝大きな判断〟をしてほしい」と訴えていました。
ところが、これがウソだと批判を浴び、「協定書」を作る段になって、「財政効果なんていうのは、あまり意味ないですから」(3日の会見)とすべて引っ込めています。
もう一つの乱暴さが、「特別区」を5つにする中で、突然「福島区は北区にする」「住之江区は2つに分けて、湾岸区と南区にそれぞれ入れる」などの「新提案」をたった15分ほどの議論で決めていることです。おまけにこの案の中には「町名変更」が記載されており、これまでの「天王寺区空堀町」は「中央区天王寺空堀町」にするなどと勝手放題決められています。
そして、「湾岸区はカジノを含む総合リゾート施設を造るから、これから発展する」「新しい中央区の特別区役所は西成に置く。あいりん地区は官庁街に生まれ変わらせる」などの粗雑な議論で「協定書案」の中身が決められています。
住民合意どころか議論さえ呼び掛けることなく、「維新の、維新による、維新のための大阪都」づくりを平然と進めています。
Q5 どうすれば打開できる?
A5 法定協議会を正常化させよ。さもなくば「維新退場」を
いまのようなやり方を許すなら、大阪の地方自治と民主主義は死んでしまいます。
異常事態を打開するためには、何よりも民主主義のルールに沿って、府議会・大阪市会で議会を開き、法定協議会委員を会派の数に応じて公正に選出し、その下で「大阪都」の是非を含む徹底論議を交わしていくことです。これは野党4会派が一致して要求している点です。
今回の事態は、橋下市長や「維新」の強さを示すものではありません。そのまったく逆で、「大阪都」構想をまともに議論できなくなった、破綻の現れです。
またこれまで「大阪都」に期待を抱いていた人も、今回のやり方をみて、橋下市長や「維新」への批判を急速に強めています。今回の事態をつうじて「維新」から新たに3人の府議が離党しています。
橋下・維新の暴挙を侮ることはできませんが、恐れる必要はまったくありません。
「民主主義のルールと議会の多数意思に従い、法定協議会を正常化させよ」「さもなくば『維新』を府民的に包囲し、『退場』の審判を」――こうした旗を掲げながら、大阪の地方自治と民主主義を懸けたたたかいとして、政治的立場を超えて広く対話・懇談を進めていきましょう。広大な共同をつくりだし、橋下・「維新」を政治的に包囲し、打ち破りましょう。