消費税10%中止、「暮らし第一で経済を立て直す五つの改革」
来年10月からの消費税10%は中止せよ――この一点での国民的大運動を
いま一つの大争点は消費税の問題であります。
安倍首相は、来年10月から予定通り消費税を10%に増税するとの決意を表明しました。しかし経済の実態はどうか。深刻な消費不況が続き、貧困と格差が拡大しています。わが党は、所得の少ない人に重くのしかかる逆進性を本質とするこの悪税にはもともと反対ですが、いまの経済状況のもとでの消費税増税は論外です。増税を強行すれば、消費不況をいよいよ深刻にし、貧困と格差拡大に追い打ちをかける破局的な影響をもたらすことは必至であります。
くわえて複数税率導入にともなって4年間の経過措置後に導入を予定されている「インボイス」制度にも深刻な問題があります。この制度のために、500万ともいわれる免税事業者が取引から排除されたり、新たに納税義務と煩雑な事務負担を伴う課税業者にならざるをえなくなります。また、雇用契約がない請負労働者や建設職人などにも深刻な影響が生じます。「インボイス」の導入には、消費税増税には賛成の日本商工会議所を含めて、中小企業団体、商工団体がこぞって反対しています。
来年10月からの消費税10%は中止せよ――この一点での国民的大運動を起こすことを、この中央委員会総会の総意として、心から呼びかけたいと思います。
「暮らし第一で経済を立て直す五つの改革」
日本共産党は、「暮らし第一で経済を立て直す五つの改革」を提案します。
1、賃上げと労働時間の短縮で、働く人の生活を良くする
第一は、賃上げと労働時間の短縮で、働く人の生活を良くすることです。大企業の内部留保のごく一部を活用すれば、全労連などが掲げている「2万円のベースアップ」は十分可能です。賃上げそのものは労使交渉で決まるものですが、政治の責任で働く人の所得を増やす政策をとることが重要であります。
長時間労働の規制、「サービス残業」の根絶、「残業代ゼロ」制度の廃止を強く求めます。非正規雇用から正社員への流れをつくる規制強化、ブラック企業への規制強化を求めてたたかいます。中小企業への手厚い支援を行いながら、最低賃金を全国どこでもただちに時給1000円に引き上げ、1500円をめざします。これらの改革は、人間らしい労働を保障するとともに、働く人の所得を引き上げ、日本経済に大きな活力をもたらすでしょう。
2、子育てと教育の重い負担を軽減する
第二は、子育てと教育の重い負担を軽減することです。教育に対する公的支出がGDPに占める割合は、日本は先進国34カ国のなかで最低であり、重い教育費負担が家計を圧迫しています。
安倍政権は、総選挙で「国難」とまで言って、幼児教育や保育の無償化を推進すると言いました。しかし、いくら保育の無償化を推進しても、認可保育所を増やさなければ待機児がいっそう増え、問題は悪化するだけではありませんか。認可保育所の増設と、それを可能にする保育士確保のため、保育士の待遇の抜本的改善を強く求めます。
憲法で「無償」とされている義務教育でも、制服代や教材費・給食費などの負担は重く、これらを含めた完全無償化を実施すべきです。高等教育の漸進的無償化という国際公約の実現にむけて、当面、大学授業料を半額にする、給付奨学金を70万人に拡充する、貸与奨学金はすべて無利子にするなどの改革に着手することを強く求めます。
3、社会保障の削減をやめ、充実へと転換する
第三は、社会保障の削減をやめ、充実へと転換することです。安倍政権の社会保障費削減政策のもとで、社会支出――社会保障給付費に施設整備費など一部を含めたもの――の対GDP比は、2013~15年度の3年間にわたって連続して低下しました。こんなことは高度経済成長期、バブル期をのぞいて、どの内閣でもなかった異常事態です。その結果、年金、医療、介護、生活保護、障害者福祉など、社会保障の全分野で連続改悪が押し付けられています。社会保障の削減から拡充への政策転換を強く求めてたたかいます。
高すぎる国民健康保険料は、社会保障政策の矛盾の一つの重大な焦点となっています。国保は加入者の所得が低いにもかかわらず、保険料が一番高く、滞納が全加入世帯の15%に及ぶなど、構造的危機に陥っています。全国知事会は、この構造問題を解決するために、「1兆円の公費負担増」を政府に要望しています。当然の要望です。日本共産党は、国保料をせめて「協会けんぽ並み」に引き下げる、そのために国が公費負担を増やすことを求めて、広範な人々との共同を広げ、奮闘するものであります。
4、日米FTA交渉を中止し、経済主権・食料主権を尊重するルールを
第四に、日本の経済主権、食料主権を投げ捨て、地域経済に深刻な打撃をもたらす日米FTA交渉の中止を求めます。9月の日米首脳会談で、日米FTA交渉を開始することで合意したことは、日本の農林水産業をきわめて深刻な危機に立たせています。このまま日米2国間交渉に引き込まれていけば、TPP交渉で譲歩した線が出発点となって、際限のない譲歩が迫られることは火を見るよりも明らかです。
譲歩と言った場合に、一番の犠牲とされるのは農林水産業です。アメリカが要求している農産物の輸入拡大は、安倍政権のもとで低下した食料自給率(38%)をさらに押し下げ、地域経済の柱である農業、それにかかわる加工・輸送業に致命的な打撃を与えることは必至であります。亡国の日米FTA交渉をきっぱり中止し、各国の多様な農業の共存、食料主権を尊重するルールを確立することを、強く求めてたたかおうではありませんか。
5、巨額のもうけがころがりこんでいる富裕層と大企業に応分の負担を
第五に、子育て・教育や社会保障のためには多額の財源が必要となりますが、わが党は、消費税に頼らない財源提案を繰り返し明らかにしてきました。その中心は、富裕層と大企業に応分の負担を求めるということですが、そのことは「アベノミクス」のもとで富裕層と大企業に空前のもうけがころがりこんでいる今、いよいよ当然の主張となっています。
保有株式時価総額1000億円以上の超大株主が保有する株式の時価総額は、安倍政権の5年9カ月で3・5兆円から17・6兆円へと5倍にも膨れ上がりました。大企業の純利益は、この5年間で19兆円から45兆円へと2・3倍にも膨れ上がりました。
税金は負担能力に応じて――応能負担の大原則にたつならば、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革こそ、いま取り組むべき最優先の課題であることは明らかではありませんか。
(日本共産党第27回大会第5回中央委員会総会報告より)